杏林医学会雑誌
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総説
米国の緩和医療と終末期選択
オレゴン健康科学大学Richardson博士の講演記録
萬 知子巌 康秀窪田 靖志下島 裕美Robert Hugo RICHARDSON蒲生 忍
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2008 年 39 巻 3+4 号 p. 49-60

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抄録

高齢化が進む日本は様々な医療問題に直面し,特に終末期の延命治療の選択に関しては,尊厳死や安楽死という言葉を含め幾度となく取り上げられてきた。
この問題は,高齢化が進む多くの先進国に共通の問題であり,多様な取り組みがみられる。特に米国オレゴン州は,致死量の薬物を終末期の患者に対し医師が処方することを許容した尊厳死法を持つ州であり,またそれに伴い緩和医療が最も発達した州としても世界の注目を集めてきた。2008年3月,杏林大学ではオレゴン健康科学大学より緩和医療・ホスピス医療の専門家であるRobert Hugo Richardson博士を招聘しその経験を聞く機会を持った。本稿はその講演をほぼ忠実に日本語に置き換えたものである。博士は米国での医療の変遷から,医療倫理,延命治療,終末期ケアへの取り組み,さらに症例の検討を通してオレゴン州の尊厳死法にも言及した。博士の論調から,オレゴン州の医療関係者が尊厳死法の存在下で如何に終末期医療に真摯に対処してきたかを窺うことができ,我々にとっても学ぶべき貴重な示唆に富むものである。

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© 2008 杏林医学会
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