杏林医学会雑誌
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原著
経静脈的低用量ジピリダモール負荷心筋コントラストエコー法を用いた冠動脈疾患における心筋虚血の評価
佐藤 一樹坂田 好美水野 宜英南島 俊徳曽我 有希子古谷 充史田口 浩樹武本 和也吉野 秀朗
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2008 年 39 巻 3+4 号 p. 87-95

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抄録

経静脈的心筋コントラストエコー法(MCE)は,心筋内血流と冠微小循環を非観血的に視覚的に評価できる方法である。また,ジピリダモール(DIP)負荷は冠動脈盗血現象により心筋虚血を誘発し,冠動脈狭窄を診断する薬物負荷法である。今回,我々は経静脈的低用量ジピリダモール負荷心筋コントラストエコー法(低用量DIP-MCE)の狭心症症例の心筋虚血の診断に関する有用性および安全性につき検討した。対象は,安定労作性狭心症,無症候性心筋虚血などの冠動脈狭窄が疑われ,冠動脈造影を施行した111例である。低用量ジピリダモール負荷は0.56mg/kgを静注して行った。本研究のMCEでは,超音波造影剤レボビストを静注し,微小気泡を破壊し高調波信号を発生させる間歇送信法,およびその高調波信号を選択的に検出し解析するウルトラハーモニック法を用い,負荷前後の心筋染影画像を描出した。負荷前および負荷後1:6間歇送信画像と比較し,負荷後の1:1間歇送信画像で心筋染影低下を認めた症例を心筋虚血誘発例とした。冠動脈造影上70%以上の冠動脈狭窄を認めた症例は111例中34例(45病変)であった。低用量DIP-MCEによる70%以上の冠動脈狭窄病変の診断率は,感度80.0%,特異度90.3%であった。冠動脈病変ごとの診断率は,左主幹部病変で感度100%,特異度100%であり,右冠動脈病変では感度75.0%,特異度89.5%,左前下行枝病変では感度85.7%,特異度90.7%,左回旋枝病変では感度80.0%,特異度90.6%であった。検査による重篤な有害事象発生は1例も認めず,軽度の有害事象が7例(6.3%)に認められたのみであった。低用量DIP-MCEが,冠動脈狭窄による心筋虚血を非観血的に視覚的に評価できる,安全性の高い有用な方法であることが,本研究によって証明された。

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