杏林医学会雑誌
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悪性腫瘍第1集
Helicobacter pyloriと胃癌
田中 昭文徳永 健吾高橋 信一
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2013 年 43 巻 4 号 p. 133-144

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抄録

 1994年,世界保健機構(World Health Organization: WHO)の下部組織である国際癌研究機関(International Agency for Resarch on Cancer: IARC)は,主に疫学的検討に基づき,Helicobacter pyloriH. pylori)は胃癌の確実な発癌因子であるdefinite carcinogen(group 1)と認定した。その後,H. pylori感染と胃癌の関係は疫学的検討だけでなく,スナネズミによる動物実験および前向き臨床研究により証明された。ほとんどの胃癌は萎縮性胃炎や腸上皮化生を含むH. pylori感染胃粘膜を背景に発生する。また,Japan Gast Study Group(JGSG)による早期胃癌内視鏡治療後症例における臨床研究において,H. pylori除菌は異時性発癌を約1/3に減少する事を示した。そこで,日本ヘリコバクター学会は“H. pylori感染の診断と治療のガイドライン”2009改訂版を発表し,「H. pylori感染症」はすべて除菌適応とした。わが国におけるH. pylori除菌の保険適用は胃・十二指腸潰瘍,早期胃癌内視鏡治療後胃,胃MALTリンパ腫,特発性血小板減少性紫斑病の4疾患のみである。今後,わが国の胃癌予防戦略をH. pylori除菌による一次予防と内視鏡検査などの画像診断による二次予防の組み合わせに変更して行かなければならない。

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© 2013 杏林医学会
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