杏林医学会雑誌
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特集「ロボット手術は汎用技術となるか?」
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術の有用性─腹腔鏡下前立腺全摘術・開腹前立腺全摘術との比較─
桶川 隆嗣福原 浩
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2019 年 50 巻 2 号 p. 77-83

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抄録

 ロボット手術(de Vinc サージカルシステム®)(図1)は,10 倍の拡大視野や遠近感を有した3次元画像により,従来手術と比較して,微細な膜構造を観察できること,高い自由度を持つエンドリストを有する手振れのない鉗子で,正確にかつ微細な手術操作を行うことができる。前立腺全摘術では剥離操作や吻合操作を人の手で行うより格段に正確に行えるし,今までの腹腔鏡手術での鉗子操作と比較にならないほど巧みに操作できることを考えれば,今後,ロボット手術は外科領域で汎用技術となり得ると考えられる。ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(robot associated laparoscopic radicalprostatectomy : RARP)では,尖部処理により断端陽性率の低下にて腫瘍制御においては有利となる。さらに,出血量,輸血率において有意に少なく,入院期間も有意に短期間となる利点がある。RARPのlearning curve は他の術式より短縮が認められるため,合併症発生率が低下すると考えられる。正確にかつ微細な手術操作を行えるロボット手術は早期に尿禁制を獲得でき,勃起機能においても良好な成績であるとの多くの報告がある。しかし,手術が簡単になったのではなく,さらなる術式の工夫が,治療成績の向上につながると期待している。

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