杏林医学会雑誌
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原著
羅漢果水抽出物の抗酸化活性に関する速度論的研究
関 健介森 数美岡田 洋二
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2019 年 50 巻 3 号 p. 117-123

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抄録

 中国で民間の抗炎症薬や解熱剤として使用されているウリ科の多年草である羅漢果水抽出物 (Fructus Momordicae Extract, FME) の抗酸化活性について,安定なフリーラジカルであるガルビノキシルに対する反応性を定量的に測定することにより検討した。その結果,まずFME 1.0g中にはガルビノキシルと反応しうる水素供与物質が1.9×1019個存在していることが分かった。また,ガルビノキシルに対するFMEの二次反応速度定数 (k2)は3.0×10-2(g/l)-1sec-1だった。さらに,ガルビノキシルに対するFMEと既知の抗酸化物質に存在する水素供与物質に限った二次反応速度定数 (k2’) は,9.4×102(mol/l)-1sec-1(FME),9.8×102(mol/l)-1sec-1 (α-トコフェロール),2.7×103(mol/l)-1sec-1 (ケルセチン), 1.6×103(mol/l)-1sec-1 (ケンペロール),および1.8×103(mol/l)-1sec-1 (没食子酸プロピル) だった。k2’の数値からそれぞれの抗酸化物質の抗酸化活性を比較すると,フリーラジカルであるガルビノキシルに対する反応性に限っては,FMEの抗酸化活性はα-トコフェロールのそれとほぼ同様の活性を有していることが判明した。これらの結果から,羅漢果の抗炎症効果や解熱効果は,羅漢果に含有する抗酸化物質の抗酸化活性が関与していることが推測された。

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