杏林医学会雑誌
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症例報告
抗Jra抗体により発症した胎児水腫の一例
濵野 祥子那須 ゆかり細井 健一郎小倉 航牧野 博大西 宏明楊 國昌
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2020 年 51 巻 3 号 p. 163-168

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抄録

胎児水腫の原因として母児間血液型不適合妊娠による胎児貧血が知られている。胎児貧血の重症化リスクが高い血液型不適合妊娠では,慎重な周産期管理が必要とされる。今回,重症化リスクが低いとされる抗Jra抗体陽性の血液型不適合妊娠により胎児水腫を呈した一例を経験した。母体は34歳,3妊2産,O型Rh(+)であり,妊娠28週の健診で胎児水腫を指摘された。妊娠29週に当院へ搬送され,重症胎児貧血の診断で緊急帝王切開術を施行された。児はO型Rh(+)であり,出生後の血液検査でHb 4.4 g/dlであった。母児の輸血関連検査,遺伝子検査の結果より,抗Jra抗体による胎児水腫,胎児貧血と診断した。一部の抗Jra抗体陽性の血液型不適合妊娠では造血抑制作用により,重症胎児貧血,胎児水腫を呈することがあるとされる。今後,抗Jra抗体陽性の血液型不適合妊娠症例を集積し,周産期管理方針の検討を行う必要がある。

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