杏林医学会雑誌
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特集「画像診断・画像下治療の最前線」
高性能3テスラMRIの最新技術と臨床応用
福島 啓太町田 治彦苅安 俊哉渡邉 正中五明 美穂高橋 沙奈江齋藤 駿吉岡 達也中西 章仁横山 健一
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2021 年 52 巻 3 号 p. 133-140

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抄録

 当院に新たに導入された高性能3テスラMRI装置Vantage Centurianは非常に高い最大傾斜磁場強度(100 mT/m)を有している。特長の一つとして高分解能化が容易であるため,従来では成しえなかった微細構造の画像化を実現できる。脳神経領域では脳動脈穿通枝の描出能が改善し,頭蓋内血管壁イメージングによる詳細な病態の把握も可能となっている。撮像条件の自由度も向上するため,従来では高分解能化や画質維持が困難であった拡散強調画像の有用性も向上する。腹部領域ではエコー時間を短縮した超高b値(3000 s/mm2)の拡散強調画像を肝臓に応用し,微小肝転移の鋭敏な検出や肝腫瘍の良悪性の鑑別に役立てている。もう一つの特長として,人工知能(AI)の機械学習の一手法であるディープラーニングを用いた画像再構成技術(AiCE)も適用できる。AiCEは一般的なフィルタ処理と異なり画像ノイズのみを除去でき,信号ノイズ比が格段に向上する。さらに,高周波成分のノイズを分離して学習を行っているため,一般的なディープラーニングと異なり,MRIの多種多様なシーケンス,コントラスト,画質などに対応でき汎用性が高い。我々はこのAiCEを併用した高分解能T2強調画像を膀胱癌症例に応用し,正確な病期診断に貢献している。「細かくきれいに」といった従来の二律背反を破る,MRIにとってブレイクスルーとなるような技術が臨床応用可能な本装置は画像診断を新たなステージへと導く。

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