2019 年 65 巻 p. 75-83
害虫の発生世代予測は,防除適期を知る必須な手法であり,有効積算温度を用いて行われる。 現在その予測には,アメダス平年値が利用されているが,近年の温暖化により気温推移が平年値から外れ予測誤差が大きくなっている。農研機構は1km メッシュで26日先までの予報値を含む気温データを提供している。これを用いれば,世代予測精度の向上が期待される。本研究では,トビイロウンカを対象としてメッシュ農業気象データ気温予報値を用いた世代予測を行い,2014 ~2017年に試験圃場で調査した密度推移データで評価した。また宮崎,佐賀,熊本の発生予察調査地点において,世代予測で予報値と平年値を用いた場合で比較を行った。その結果,払い落とし調査による評価では発生世代を正しく予測した。また予測評価では,平年値と気温差がある年や,アメダス地点から離れた地点や山間部の標高差のある地点で予測を行う場合にメッシュ予報値の利用が有効であると考えられた。