九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: O11-4
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セッションロ述11 スポーツ・健康2
当院における腰椎分離症の傾向と再発例の特徴
上原 博斗平野 敦大田渕 俊紀波多野 夢西古 亨太
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抄録

【目的】腰椎分離症 (以下、分離症)は、関節突起間部の疲労骨折で、発育期のスポーツ選手に多く、腰椎の伸展、回旋動作の反復ストレスが発症要因とされる。 分離症の診断にはMRI、CTが用いられる。MRIでは炎症所見、CTでは骨折部の状態が確認され、病期が確定する。西良らは、初期、進行期、終末期に病期を分類し、それぞれ癒合率、癒合期間が異なることを明らかにしており、初期では癒合率94%、癒合までの期間平均3.2ヶ月、進行期の癒合率27〜64%、癒合までの期間5.4〜5.7ヶ月、終末期の癒合率0%と報告している。一方で分離症再発の報告もあり、三宅らは10.2%と報告している。保存療法後に腰痛が再発する症例も44%と報告もあり、再発予防が重要と考える。そこで本研究の目的は分離症再発例の特徴を調査することとした。 【方法】2022年4月から2024年3月までに当院で分離症と診断を受けた141例のうち、最終経過観察できた87例 (男性79例、女性8例、平均年齢16±1.6歳)とした。電子カルテより、再発の有無、罹患椎体、病期、競技種目、再発までの期間を後ろ向きに調査した。分離症の診断は西良らのCTでの病期分類を参考に主治医が評価した。また、再発の定義はSakaiらの報告をもとに、初回と同部位に加え、同一椎体の反対側や異なる椎体における新鮮分離症を罹患したものとした。なお、除外基準は二分脊椎、分離症と別部位の同時加療、途中で加療を自己中止したものとした。 【結果】対象者の罹患椎体はL5が55例、L4が23例、L3が3例、多椎体はL4・L5が6例であった。病期は極初期27例、初期36例、進行期9例、終末期15例であった。罹患分離側は片側65例、両側22例であった。競技はサッカー36例、野球15例、バスケットボール7例、バレーボール7例、陸上競技6例、ハンドボール4例、テニス5例、柔道3例、剣道3例、吹奏楽部1例であった。再発例に関しては、9/87例 (10.3%)であった。罹患椎体はL5が4/55例 (7%)、L4が2/23例 (8.7%)、L4・L5の多椎体が3/6例 (50%)であった。病期は極初期4/27例 (14.8%)、初期3/36例 (8%)、終末期2/15例 (13.3%)であった。罹患分離側は片側6/65(9.2%) 両側3/22(13.6%)であった。競技別再発率は、サッカー6/36例 (16.6%)、野球1/15例 (6%)、バレーボール1/7例 (14%)、吹奏楽が1/1例 (100%)であった。再発までの期間は平均10.6±10.5ヶ月 (最短3ヶ月、最長36ヶ月)であった。再発例で復帰後6ヶ月以内は5/9例 (55.5%)、6ヶ月以降は4/9例 (44.4%)であった。 【考察】分離症復帰後に腰痛再発が多く、分離症再発率に関する報告では、三宅らは10.2%と報告している。本調査の結果は10.3%となった。罹患椎体ではL4・L5多椎体例50%、L4が8.7%、L5が7%という結果となった。病期別再発率は、極初期 (14.8%)、終末期 (13.3%)、初期 (8%)であった。辰村らは初期例が多いと報告しており、本調査では極初期が一番多い結果となった。競技別再発率は吹奏楽 (100%)サッカー (16.6%)バレーボール (14%)野球 (7%)であった。サッカー、バレーボール、野球は再発率の高い競技と言われている。吹奏楽に関しては、普段運動習慣が乏しい上での運動負荷増大が分離症再発に繋がった可能性を示唆。再発までの期間は平均10.6±10.5ヶ月であった。三宅らは復帰後6ヶ月以内に再発することが多いと報告し、復帰後の運動強度が強すぎた可能性を指摘した。本調査では6ヶ月以内の再発が55.5%、6ヶ月以降の再発が44.4%であった。 【まとめ】分離症再発率は10.3%であった。 L4・L5の多椎体、両側例の再発率は、L4・L5の単独例、片側例より高かった。 【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言の倫理規定に基づき患者が特定されないよう配慮した

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