九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: P7-4
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セッションポスター7 測定・評価
COVID-19罹患後に心身機能が低下した症例に対し目標設定ツールを用いた理学療法介入の効果
古川 慶彦吉田 大地
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キーワード: COVID-19, 目標設定, GAS
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抄録

【はじめに】 COVID-19罹患後の症状は多岐にわたり、複数の症状を同時に認めることも特徴である。そのため、多面的な評価のもとに障害像を把握し、生活機能の改善に向けた理学療法を展開する必要がある。今回、COVID-19罹患後に運動機能および精神機能に低下がみられた症例に対して、目標設定ツールを使用した介入を行った結果、心身機能の改善が得られたため報告する。 【症例】 70歳代女性。入院前は独居で、日常生活動作、家事動作は自立していた。頚椎症性脊髄症による椎弓形成術施行後のX日に当院入院となり、同日より理学療法開始となった。入院時頚髄症JOAスコア9点。自宅退院を目標に介入していたが、X+67日目にCOVID-19陽性となり隔離開始となった。隔離期間中の理学療法は中断となったが、解除後のX+78日に再開した。X+78日の身体機能・呼吸機能評価は、握力(右/左):5.4㎏/2.3㎏、5回立ち上がりテスト(以下SS-5):60秒、Berg Balance Scale(以下BBS):9点、6分間歩行距離(以下6MWD):100ⅿ、VC:2.23L、FVC:1.89L、FEV1%:92.6、PEF:3.7L/sであった。ADL評価はFunctional Independence Measure(以下FIM):65点、Barthel Index(以下BI):65点であり、隔離開始直前より低下していた。また、歩行を中心とした動作への不安・恐怖心の訴えがきかれるようになり、自宅退院に対して消極的・悲観的な発言が増加した。そこで、X+88日目にHospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS)、転倒予防自己効力感尺度(以下FPSE)を追加して評価を行い、Goal Attainment Scale(以下GAS)とカナダ作業遂行測定(以下COPM)を用いて目標設定を行った。HADS(不安/抑うつ)は15点/17点、FPSEは13点であった。症例とともに設定したGASにおける1か月後の目標は「屋内で歩行器を使用して50ⅿ以上の距離を自立して歩行できる(段階:0)」とした。また、同時に測定したCOPMにおける目標に対する実行度/満足度は3/1であった。運動療法は、修正Borg scale3~4を目安に運動負荷を設定し、下肢筋力増強運動、起立練習、歩行練習、日常生活動作練習等を実施した。 【結果】 X+106日目の握力(右/左):8.4㎏/4.8㎏、SS-5:34秒、BBS:33点、6MWD:280ⅿ、VC:6.50L、FVC:4.87L、FEV1%:87、PEF:4.22L/S、HADS(不安/抑うつ):10点/13点、FPSE:21点、FIM:90点、BI:70点であった。GASで設定した目標は達成し、COPMの実行度/満足度は7/8であった。不安・恐怖心の訴えは軽減し、歩行や生活動作に対し「自信がついた」「家での生活も大丈夫と思う」と前向きな発言がきかれるようになった。X+120日目に自宅退院となった。 【考察】 今回、COVID-19罹患後の運動機能低下に加え、精神機能も低下した症例を経験した。GASを用いた目標設定に、症例自身が関与したことが意欲的に理学療法に取り組む動機づけとなったことで運動機能改善につながり、目標達成した要因になったと考える。このことから、目標設定ツールの使用は、心身機能障害に対するリハビリテーションを進める上で有効な可能性がある。 【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言を遵守したうえで、対象者に十分な説明を行い、同意を得た。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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