主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに】 回復期リハビリテーション病棟はセラピスト主体の「できるADL」から、生活の場を見据えた「しているADL」の獲得に向けてセラピストのみでなく、多職種が協働して行う包括的アプローチが求められている。今回、くも膜下出血後に意識障害、四肢麻痺を呈した症例に対して、病棟内移動を介助下での歩行へ反映出来た為ここに報告する。 【症例紹介】 症例はくも膜下出血により四肢麻痺、意識障害を呈した40歳代の男性。身長:173.0㎝、体重:58.0㎏。合併症として水頭症 (シャント後)、胆管閉塞、気管切開、胃瘻造設。入院時評価はGCS:E3、V1、M4 Br-stage(Rt/Lt):Ⅲ-Ⅱ-Ⅰ/Ⅲ-Ⅱ-Ⅰ 関節可動域(Rt/Lt):足関節背屈(-40°/-45°) FIM:18点、BI:0点 日常生活機能評価:17/19点 両親のNeed:家で一緒に暮らしたい。息子の為にできることをしたい。 病棟スタッフの患者本人へのイメージ:身長が高い為、立位だと圧迫感があって怖い。 【経過】 X日当院入院。意識障害・四肢麻痺を呈し基本動作・ADL動作は全介助でリハビリ時以外はベッド上での生活。リハビリ室にて起立練習、免荷式歩行器歩行練習を中心に実施。X+33日、GCS:E4、V1、M6、Br-stage(Rt/Lt):Ⅳ-Ⅲ-Ⅲ/Ⅳ-Ⅲ-Ⅲと向上し、病棟練習へ移行し、家族介助での自主練習 (ベッド上端坐位練習)を指導。X+75日、両下肢短下肢装具作成したことで立位バランス向上し、歩行介助量軽減。mFIM:15点、BI:35点。X+121日、病棟スタッフ介助での歩行器歩行への移行を検討するも、病棟スタッフからは身長が高く、倒れてきたら怖いなど消極的な発言が聞かれた。そこで患者本人の練習風景を見てもらうことに加え、適切な介助方法を病棟スタッフ個人毎に指導。X+134日、病棟スタッフより「思ったより楽に介助できる」との発言聞かれ、病棟移動を歩行器歩行に変更しmFIM:27点、BI:40点となった。また家族介助での起立練習も可能となった。 【考察】 ADLは分業と協業の重複領域で、多職種における協業なしには獲得は困難である。「できるADL」と「しているADL」の格差の原因は環境条件、体力、習熟・習慣化、本人・家族の理解、意欲・依存心、不適切な介護と言われており、本症例は歩行介助量が多いのではというイメージに加え、高身長で圧迫感があることに対する歩行介助に対する不安が要因であると考えた。よって早期に病棟で繰り返し練習を行い環境への慣習化に努め、実際の生活の時間帯でスタッフに介助方法を経験してもらい個人毎に指導を行った。また、主目標として家族による介助で自宅内歩行が可能となった状態で自宅退院とし、副目標として病棟内をスタッフ介助下での歩行とした。結果、歩行介助に対する不安感が軽減したことで病棟内移動が歩行器歩行で可能となり、Functional Ambulation Categories:スコア2、mFIM:27点、BI:40点とADL格差が縮小した。臨床現場でのチームビルディングには業務の共同化とコミュニケーション向上が重要となる。より良いチームを構築していくために今後も多職種で協業する機会を増やしていきたいと考える。 【倫理的配慮】今回の発表に関して、患者・家族には趣旨と内容を十分に説明した上で同意を得て報告するものである。