九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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生涯学習システムの動向(第2報)
-理解と意欲について-
*阿部 孝彦工藤 義弘高橋 知良加藤 強竹村 仁山下 伸一平尾 逸人稗田 増美中野 将行安藤 真次池田 奈実子折岡 加代子三木 征博川口 織江後藤 裕美
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p. 29

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抄録

【はじめに】
 生涯学習システムを構成する主なものは新入会者全員を対象とした「新人教育プログラム」(以下、新人プログラム)と新人プログラム修了者全員を対象とした「生涯学習基礎プログラム」(以下、基礎プログラム)に分けられる。大分県理学療法士協会生涯学習部は「新人プログラム」の単位管理・研修運営を担当しているが、生涯学習システムに対する理解と意欲について調査することを目的として本検討を行った。
【方 法】
 対象:大分県理学療法士協会会員401名(アンケート調査時2002年7月)。方法:アンケートによる調査で発送は郵送、回収はFAXで行った。アンケートの内容は、新人プログラムと基礎プログラムについて分け、年齢・性別・経験年数の基本情報、システムに対する意欲・理解・今後の継続意志について9から17項目を設題した。評定法は事前に60名より行った予備調査から尺度を構成し、自計式で順序尺度とした。尺度構成はSD法(人の態度、意識、等の尺度構成法)を用い意欲の高いものから「強くある=4・ほどほどにある=3・あるとはいえない(わからない)=2・ない=1」とした。
【結 果】
 回答数は401名中156名(39%)であった。内訳は新人プログラム履修中の方198名中104名(52.5%)、修了された方203名中52名(25.6%)、新人プログラムでは、平均年齢:25.9歳、経験年数:3.8年。新人プログラムを修了しようという意思は、平均3.0/4で”ほどほどにある”であった。システムの理解度は、平均2.9/4。システムの理解とプログラムの修了意欲を世代別に比較すると、20歳代から30歳代へと年代が上昇するにつれてシステムの理解度は高まった。しかし反対に意欲は低下していた。新人プログラム修了後も基礎プログラムを継続する意思については、平均2.7/4。新人教育プログラム修了後、専門領域研究部会(以下、研究部会)に登録したいという意思は平均2.3/4であった。また、専門理学療法士の認定を取得したいという気持ちは、平均2.4/4で「ほどほど」と「意欲があるとはいえない」の中間であった。新人プログラムでは、履修終了→基礎プログラム→専門部会→専門理学療法士と一連のプログラムが進むにつれて意欲の低下傾向がみられた。次に新人プログラム修了者の結果を示す。平均年齢:33.8歳、平均経験年数:12.0年、新人プログラム終了後平均:4.4年で、15/38名(39.4%)が免除対象者であった。2000年度の更新をされた方は19/46名(41.3%)、その中で2005年の次回更新をしようと考えている方が、17/19名(89.5%)であった。現在、いずれかの研究部会に登録されている方は9/43名(20.9%)「研究部会に登録していない」と答えた方で今後登録する意思がある方は13/29名(45%)であった。次にシステムの理解は平均2.9/4。専門領域研究部会に興味のあるプログラムができれば履修していく意思は平均2.4/4。いずれは専門理学療法士の認定を取得したいという意思は2.4/4であった。また、非免除者・免除者の比較では研究部会への入会・専門理学療法士への意欲は、非免除者の方が前向きであった。さらに専門理学療法士への意欲を性別・年代別にみると、男性は20から40歳代にかけて上昇していくが、女性は、しだいに低下してくる。
【考 察】
 生涯学習システムを構成する主なものは「新人プログラム」と「基礎プログラム」である。「新人プログラム」は新人が、組織,役割,歴史等の理解を深め理学療法士としての職業倫理,人間関係,症例・研究報告等の方法論を学ぶことにある。「基礎プログラム」は新人プログラム修了者全員対象で幅広い知識と技術の修得及び生涯にわたる研修の継続である。本検討はシステムに対する理解と意欲についての調査が目的である。結論としては、システムへの理解度は比較的高く、世代とともに上昇している、しかし理解度とは逆に、履修意欲は年代ととも徐々に低下してくる結果となった。これは、経験が増すと履修に対する意欲が低下すると単純に考えるよりもむしろ経験が増すと興味に嗜好性が出てくる上に、物理的時間もなくなる。また既婚者であれば、仕事と家庭、さらには育児の両立、時間的・精神的余裕がなくなり多面的因子を考慮しなければならない。日常でどのように時間を捻出するかを検討することも必要なのかもしれない。「生涯学習」は「教育」とは違い、自ら主体的に学ぶものであり、いかに自ら「その気になるか」がポイントであると考える。強制的に行うと主体的な学習としての意味を持たなくなるからである。そういう意味でわれわれは、「このシステムをうまく利用して自己啓発の場として,貴重な機会としてとらえる。」という環境を提供する事を目標としている。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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