九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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踵骨骨折のX線学的検討と機能予後
*田中 忠孝山下 導人
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p. 43

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抄録

【はじめに】
 踵骨骨折は、その解剖学的・機能的特性により治療成績に問題を残す骨折である。今回、当院における、踵骨骨折者の予後調査及びX線学的検討を行うことにより予後関連因子に若干の知見を得たので報告する。
【対象】
 対象はH8年8月からH16年2月までに受傷した踵骨骨折者のうち、評価可能な15例18足、男性9例11足、女性6例7足。受傷側右7例、左5例、両側3例。平均年齢50.2±30.8歳。
 経過観察期間平均46ヶ月±52ヶ月。
【方法】
 臨床評価はMaxfieldの判定基準を用い、excellent・very good群(以下良好群)、fair・poor群(以下不良群)に分類。
 X線学的所見よりArnesen分類
 踵骨横径増大度に関しては軸射像においてB(外側膨隆の頂点における接線の垂線)/A(踵骨体部横径)とした。
 Bohler角・横径増大度とMaxfieldの判定基準の統計学的解析には、Mann-Whitney Testを用い、危険率5%以下を有意差ありと判断した。
【結果】
 Maxfieldの判定基準、良好群13足(excellent 9足、very good 4足)、不良群 5足(fair 2足、poor 3足)。
 Arnesen分類、関節外骨折 6足、Tongue-type 3足、Depression-type 9足、Stamp-type 0足、Crush-type 0足。踵骨骨折全体は不良群が28%、関節外骨折15%、Depression-type44%、Tongue-type0%。
Bohler角、良好群19.8±14.2、不良群22.6±16.6、両群に有意差なし。
 横径増大度、良好群1.02±0.22、不良群1.2±1.0、両群に有意差あり(p<0.01)。
【考察】 踵骨骨折後の疼痛は諸家により、整復不全による距踵関節の不適合性、踵骨の扁平化、Bohler角の減少による下腿三頭筋不全、扁平足変形、骨隆起による腓骨筋腱圧迫、腓腹神経の圧迫、骨突出に起因するものなど、いくつかの原因が関与していると報告されている。
 Arnesen分類は、関節外骨折の予後は良好であり、Depression-typeの予後は比較的不良であった。しかし、杉山らはCrush-typeにおいて成績が劣っていたが、関節内骨折の他の3群においてあまり差を認めなかったと報告している。自験例において、Crush-typeは調査対象に含まれなかったこともあり、明確な裏づけを得ることが出来なかった。
 今回、Bohler角は良好群・不良群の予後成績に有意差を認めなかった。Bohler角と予後成績は、諸家により報告が2分している。日野原らはBohler角単独での予後評価は不十分であると報告している。野村はBohler角の減少による疼痛と扁平足における踵部の刺すような疼痛について指摘している。又、杉山らはBohler角減少による腓腹筋機能不全があると報告している。
 横径増大度の良好群・不良群に有意差を認めた(p<0.01)、このことは踵骨横径増大による外側膨隆が予後に大きく関与しているという杉山らの報告と合致しており、踵骨横径増大度は予後関連因子として有用であると考えられる。踵骨の後距踵関節後下方に下腓骨筋支帯・腓骨腱鞘が強靭に付着しており、踵骨骨折の外側膨隆の部位となっている。Neutral triangleと呼ばれる骨梁の非常に疎な部分がこの前方にあり、距踵関節の下方に位置しているので、joint fragment が落ち込みやすく、踵骨の外側膨隆が起きやすい結果となっている。自験例において、外果直下部での疼痛は多く発生しており、その原因はそれらによる踵骨体部外側膨隆による外果との接触あるいは二次的な腓骨筋腱鞘炎などが考えられる。大本は徒手整復法は受傷後3日以内にすべきであり、4日以上では徒手的には有効な力が働かず、整復は困難であると報告している。当院では、6週:自動運動・1/3部分荷重歩行、8週:他動運動、10週:全荷重歩行を施行。術後自動運動開始時より、術後の踵骨外側膨隆抑制目的で、運動療法の一環として同様な手技を施行。
  【まとめ】
(1)X線学的因子としては踵骨体部横径増大度が最も端的に機能予後を反映していると思われた。術中・術後の踵骨横径の整復に着目する必要があると考える。
(2)踵骨骨折術後に対する、徒手的圧迫は一定の効果が得られていると考えられる。
(3) Arnesen分類による機能予後は、明確な裏づけを取ることが出来なかった、今後症例数を増やし今回の結果についての検討の継続が必要であると考える。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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