九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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反張膝の回旋要素の検討
より障害像と結びつけるために
*平川 善之野原 英樹北條 琢也石田 奈穂子安田 和弘北川 智子蓮尾 幸太元尾 篤隈本 健山崎 登志也
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p. 45

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抄録

【はじめに】
 反張膝はマルアライメントの一つで、膝関節障害と関わりが深い。しかしスポーツ場面などでは反張膝である過伸展損傷のみでなく、内・外反に伴う回旋ストレスが、靭帯や半月板といった膝構成組織の重大な損傷に結びつく症例を多く見かける。我々は反張膝を、単に矢状面から見た単軸性の過伸展としてのみでなく、回旋(特に外旋)を含めた複数軸性の複合状態と捉えることでより障害像と結び付けやすいと考えている。そこで今回、その評価方法と反張膝に含まれる回旋要素について一定の知見を得たので報告する。
【対象】
 下肢疾患のない健常者20名39肢。男性12名、女性8名、平均年齢25.1±3.4歳。膝疾患を有する一肢は除外した。
【研究デザイン】
1、全対象者を反張膝群(以下R群)・非反張膝群(以下NR群)に分類する。
2、両群においてQ-Angle(以下Q-A)を、通常の膝伸展位と、小田らの方法を参考に外旋負荷を加えた過伸展位で測定した。その結果を2群間で比較し、R群の外旋要素の把握を行う。
3、回旋不安定性テスト(以下RIテスト)が、反張膝に関与しているのかを検討する。
4、R群内でRIテストの結果が、膝過伸展度に影響しているかHFD(床踵間距離)を用いて検討する。
【方法】
 詳細な評価方法を示す。
反張膝の分類:自然立位10°以上の過伸展を反張、未満を非反張とした。
Q-A:臥位で膝伸展位での測定(以下ST)と、膝屈曲30°から検者が徒手的に外旋方向に負荷をかけつつ、被検者に最大伸展させた状態(以下HE)での測定の2方法で行った。
RIテスト:外旋不安定性の評価として、AMRI及びPLRIテストを採用した。各々を小田らの分類判定基準に則り+・±・-の3群に分類した。
HFD:背臥位にて他動的に膝を過伸展させ、床面と踵の距離を測定した。
【結果および考察】
1、R群11名20肢(平均伸展角度14.3±2.9°)NR群10名19肢(平均伸展角度4.5±3.4°)であった。
2、各群とST、HEでQ-Aの平均値の比較(分散分析)を表1に示す。R群はNR群よりST、HEともに有意に大きく(p<.05)、またR群NR群ともにSTよりHEが有意に増大した(p<.05)。先行研究と同様に、HE操作によりQ-Aの増大が見られ、Q-Aが膝回旋の評価となることがわかったが、両群とも同様の結果を示し、R群の回旋の特異性を表現できていないと考えられた。
3、次にRIテストの結果を示す。PLRIではR群が(+)と(±)で19/20肢、NR群が(±)と(-)で18/19肢と分布に傾向があったが(表2)、AMRIでは両群とも(±)に偏る傾向の分布となった。従って反張膝の外旋不安定性評価にはPLRIが適していると判断した。R群内にてPLRI(+)と(±)(-)間のHEのQ-Aで(+)の者が有意に大きかった(t検定、p<.05)。反張膝でもPLRIの結果がQ-Aに影響を与えることがわかった。(表3)
4、さらにR群内のPLRI(+)と(±)(-)の2者間でのHFDは、(+)の者が有意に大きかった(t検定、p<.05)。このことからPLRIの結果が過伸展角度に影響を与えることが示唆された。
 以上のことから反張膝はPLRIが存在することにより、膝最終伸展域で下腿が外旋し(Q-Aの増大)、より過伸展を増強させる(HFDの増大)現象が生じることが考えられた。
【まとめ】
 健常者を対象に回旋不安定性の反張膝に与える影響を比較した結果、反張膝の外旋不安定評価の判定にはPLRIが適当であり、その結果特に(+)と(±)(-)の違いにより、反張膝の過伸展角度に影響を与えることがわかった。これらのことから反張膝の評価には、矢状面から見た過伸展角度のみならず、PLRIを含めた回旋要素を評価することにより、障害に結びつく病態としての反張膝を把握できると思われた。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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