九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
会議情報

脳梗塞モデルラットの機能回復とGDNFの発現について
*大渡 昭彦池田 聡堀ノ内 啓介上川 百合恵原田 雄大野元 佳子吉田 輝坂江 清弘川平 和美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 18

詳細
抄録

【目的】
本研究の目的は,脳梗塞片麻痺モデルラットを作成し,その機能回復過程を観察する。そして,neurotrophic factorの一種であるGDNF(Glial cell line-derived neurotrophic factor)の発現とその機能回復過程がどのような関係にあるかを明らかにすることにある。
【対象と方法】
実験には7週齢のWistar系ラットの雄11匹(平均体重231±12g)を用い,脳梗塞モデルを作成し,それらの麻痺の回復を2週間観察した。また,neurotrophic factorの発現を確認するために7週齢のWistar系ラットの雄30匹(平均体重230±11g)を用い,脳梗塞モデルを作成し,1日目,3日目,5日目,7日目,14日目にそれぞれ6匹ずつ灌流固定後,免疫染色でGDNFの発現を確認した。脳梗塞モデルは,麻酔下でラットを脳定位固定装置(SR-8N Narishige)で固定し,頭皮を剥離した状態で光源装置(MHF-G150LR Moritex)より誘導された波長560nmの緑色光線を照射しながら尾静脈より光感受性色素ローズベンガルを20mg/kg静注して作成した。照射部位は下肢の運動野に照射されるよう,Bregmaより右6mm・後方4mmを中心とした直径10mmの範囲とし,照射時間は20分で行った。麻痺の評価には幅2.5cm,長さ122cmの棒の上を歩かせ,後肢の動きで判定するFeeneyらのScaleを使用した。なお,今回の実験は鹿児島大学動物実験指針に従い,鹿児島大学動物実験委員会の承認を得て行った。
【結果】
FeeneyらのScaleは7段階評価で7が最も麻痺が軽い状態を示す。この7に回復する日数は11.7±2.3日(14日以上は14日で計算)であった。麻痺の状態の平均は1日目1.0,2日目1.8,3日目2.3,4日目2.5,5日目2.8,6日目3.7,7日目4.5,8日目5.3,9日目5.5,10日目5.9,11日目6.3,12日目6.5,13日目6.6,14日目6.7であった(順序尺度なので平均表示はおかしいが,字数の関係上使用した)。GDNFの発現は脳梗塞作成初期の段階で最も多く発現しており,時間の経過とともに減少する傾向を示した。
【考察】
今回の研究で,神経栄養因子であるGDNFが麻痺の回復を促進している可能性が示唆された。我々の脳梗塞モデルは侵襲が少ないために早期介入が可能で,早期運動療法の効果を検討することが可能である。現在は運動を行わせた場合と自然回復,単純な反復運動と複雑な運動を行わせた場合において,栄養因子の発現と麻痺の回復の関係を検討中である。

著者関連情報
© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top