九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
会議情報

zone2 屈筋腱修復後における早期自動運動療法の工夫点
*野中 信宏田崎 和幸山田 玄太貝田 英二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 23

詳細
抄録

【はじめに】
当院でのzone2における屈筋腱修復後の早期自動運動療法の治療成績を報告し、セラピィの方法と工夫点を紹介する。
【対象】対象は過去4年間に当院にてzone2での屈筋腱断裂を修復した9例9指である。受傷時年齢は19歳から55歳(平均34歳)、男7例女2例であり、損傷指は示指5指、中指2指、小指2指である。縫合法は吉津法が8指、津下法が1指であり、全例補助縫合を追加した。経過観察期間は2ヶ月から5ヶ月(平均2.9ヶ月)であった。
【方法】
手関節0度MP関節60度屈曲IP関節0度位の背側スプリントを作製し、運動時以外はtension reducing positionとした。患手を徹底挙上させ、術後3週間は1日4セット、セラピストの管理下で5回の屈曲伸展運動を行った。セラピィ導入時は禁忌事項と運動方法を十分に説明し、健側手にて模擬訓練を行った。まず、患側全指を完全他動屈曲させ最小限の力でplace and holdさせる。この時、患指の自動運動でなく、隣接指や手掌にかけてholdしていないかの確認が重要である。次に手関節30度屈曲位、他指伸展位で患指の伸展運動を行う。MP・PIP関節最大屈曲位でDIP関節を他動伸展、次にDIP関節を他動屈曲した後、MP関節最大屈曲位で、PIP関節を他動伸展させる。この時、遠位のDIP関節が屈曲するようであれば修復腱の緊張が高いと考え、伸展角度を調節する。他動伸展後、MP関節60度屈曲位で軽い自動伸展を行う。術後3週経過時に自動屈曲可動域を確認し、良好例は1日4回の自動運動のみとした。不良例は持続的な最大自動運動を行い、術後4週からweight pulling ex、屈曲拘縮残存例には術後5週からスプリントでPIP関節を伸展させた。術後6週で背側スプリントを除去し、術後8週からADLで患手を使用させた。
【結果】
日手会機能評価%TAMとstrickland評価共に優8指、可1指であった。再断裂例はなく、可の1指は陳旧性槌指で受傷前からDIP伸展がー45度であった為、機能評価では可であった。
【考察】
zone2における手指屈筋腱修復後の不良例は再断裂、指屈曲不全、PIP関節の屈曲拘縮が主な原因である。当院では術後3週間はセラピスト管理下のみのセラピィ、セラピィ時以外のtension reducing position固定、症例自身の自己管理を徹底して再断裂を予防している。屈曲不全や腱癒着に対しては、自動伸展運動にて修復腱の滑走を得る方法も報告されているが、我々は屈筋腱本来の働きを優先し、腱の滑走は近位方向に求めるべきだと考えている。修復腱の正確なplace and holdで十分に近位方向に滑走しており、代償動作の予防が大事である。又、指屈曲位での腱癒着が懸念されるが関節性拘縮予防目的に行う単関節毎の伸展運動にても修復腱は遠位に滑走しており自動伸展運動はわずかに行う程度で十分であると考えている。

著者関連情報
© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top