九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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両大腿切断者の義足を製作した症例を経験して
*米崎 真寿美田中 智香徳岡 博文
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キーワード: 両大腿切断, 歩行, 聾唖
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p. 12

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抄録

【はじめに】
リハを実施する上で患者のニーズ把握は重要である。しかし医療従事者側のゴール予測と異なる事が少なくない。今回、両大腿切断者に義足を製作し、歩行・ADL訓練を行った症例を経験したので報告する
【症例紹介】
50代男性 感染後両大腿切断 右腱板損傷 先天性聾唖 H17/5/24受傷、5/26左下腿切断、5/30両大腿切断、断端長:Rt26cm Lt21cm 《初期評価》ROM-T:右肩関節屈曲・外旋制限あり 股関節(屈曲-伸展)Rt85p-10p Lt75p-15p MMT(股関節周囲):右4- 左3 ADL:上肢ADL自立、移乗介助
《最終評価》ROM-T:股関節(屈曲-伸展)Rt100-10 Lt95-15 MMT:右4+ 左4 ADL:車椅子自立、病棟廊下(100m)義足歩行自立
【経過】
訓練開始時、 持久力の低下、肩関節・左断端部疼痛認め、push upや断端部の荷重が困難であった。 soft dressingの使用を徹底し成熟断端獲得を目指した。7/14 エアソケット使用し立位開始、8/29吸着式ギプスソケット完成。平行棒内立位→歩行と進めたが引き布を使用して両側義足の装着・起立には介助を必要とし、長時間の歩行は困難であった。12/5 TSBシリコンソケット完成、12/8自己にて着脱獲得、着脱が可能になった事で義足装着時間延長につながり、12/15廊下松葉杖歩行監視、その後自立歩行獲得となった。車椅子への坐り・床からの立ち上がりも可能となったが、床からの立ち上がりを実施する為に義足長とソケット前壁の調整を行った。義足は以前の身長より開始し、10cm以上低く設定した。H18/1/5廊下松葉杖歩行自立、2/8 転院となる。
【考察およびまとめ】
本症例は義足歩行を強く希望された。受傷後の精神的ショックや歩行に対する執着を考慮すると義足を製作しモチベーションを向上させる事は必要不可欠であった。義足装着自立の為、TSBシリコンソケットを選択した。外観も考慮し以前の身長と同じ高さから始めたが、操作性から徐々に低くした。本症例が歩行を獲得できた要因として、筋力・持久力の向上、義足着脱獲得、内科疾患・疼痛などの阻害因子がなかった事が挙げられる。本人のニーズとリハのゴールをできるだけ近づける事で意欲向上につながったと考えられる。本症例は聾唖者の為、意思疎通に時間を要した。今回、両大腿切断者のリハを経験し、訓練の難しさとともに症例における予後予測の重要性も再認識することができた。

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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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