九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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「服薬管理の自立度に及ぼす認知の影響について」
メタ認知を中心に
*日田 真人徳田 光広
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キーワード: メタ認知, 自立度, 服薬管理
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p. 18

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抄録

【はじめに】
多くの患者は服薬が日課であり、退院後も継続する場合が多い。服薬の自己管理(以下、服薬管理)は自宅復帰の重要な条件の一つとなる。しかし実際は認知症や高次脳機能障害により、病棟が管理したり代償手段を必要とする場合も多い。その場合、その方の服薬管理に関する認識(メタ認知)が大きく関与する。
一般的に服薬管理能力改善に対する必要性は十分浸透しておらず、評価アフ゜ローチ体系が形成されているとは言いがたい。そこで今回服薬管理の自立度およびメタ認知の評価を比較検討し、メタ認知の及ぼす影響を調査したので報告する。
【対象】
服薬を日課とする患者で1食事動作自立2薬袋開封自立3HDS-R15点以上、を満たす方とした。対象者数は19名(男性6名、女性13名 平均年齢74.9歳±13.3歳)とした。
【方法】
服薬管理における評価としては、1)服薬管理の自立度評価:1自立度評定2服薬行動得点、2)認知面の評価:1HDS-R、3)メタ認知の評価:1メタ認知全般の評価 ―生活健忘チェックリスト(memory check rist:MC)の本人評価と第三者評価の各項目の差の合計(以下、MC評価点)2服薬の領域に特定したメタ認知の評価 ―服薬の質問紙(taking medicine question rist:TQ)の本人評価と第三者評価の各項目の差の合計(以下、TQ評価点)、を行った。そして統計的処理として各々の相関係数を求めた。
【結果】
各評価項目相互の相関係数の結果としては、自立度評定平均値と服薬行動得点(r=0.83)、自立度評定平均値とHDS-R(r=0.76)、服薬行動得点とHDS-R(r=0.96)との間には強い正の相関が見られた。またHDS-RとTQ評価点の間には強い負の相関(r=-0.7)が、自立度評定平均値とTQ評価点(r=-0.48)、服薬行動得点とTQ評価点(r=-0.5)の間にはやや強い負の相関が見られた。
【考察】
認知面が低下すると服薬の際飲み損じの可能性が高くなる。そのため服薬管理の自立度2項目と認知面には互いに強い正の相関が出たと考える。
次に清水(2002)は「個人が自己の状況を認識する際には、つねに他者の存在や視点、対人相互作用、原因帰属などが関わってくる。」と述べている。これを服薬に置き換えると、患者は医療スタッフからフィート゛ハ゛ックを受けたり、他患と話すなど薬に関わる機会が度々ある。また服薬を忘れると自身の体に影響があるため、服薬への関心は高い。その結果、患者は特に服薬に関してメタ認知が高まったと考える。またフィート゛ハ゛ックを活かすためにはある程度の認知機能は必要であり、より正確にメタ認知をもつためには正常に近い認知機能は不可欠と言える。そのため自立度とTQ評価点、HDS-RとTQ評価点との間に強い相関が出たと考える。以上から服薬に関するメタ認知も服薬管理に影響のある要素の一つであると思われる。

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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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