九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 046
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通所リハビリテーション利用者における上肢機能の改善について
*富永 誠二金城 咲安村 勝也又吉 達
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キーワード: 脳卒中, 維持期, 上肢機能
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抄録

【はじめに】
 近年の上肢機能に対して、維持期で非麻痺側拘束療法(CI療法)の効果が発表されているがその他、維持期の手技による報告例は少ない。今回、我々は反復促通療法(以下川平法)を用いた訓練を通所リハビリテーション(以下通所リハ)利用者に行い、上肢機能への効果が見られたので以下に報告する。
【対象】
 通所リハを週3回利用されている脳卒中患者で、発症から4年以上が経過した麻痺やADLに変化がない患者3名とした。身体機能は、Brunnstrom stage上肢3~5で指示理解がよい方とした。
【方法】
 期間は3週間で、通常のリハビリテーション(以下リハビリ)に加え20分の上肢機能訓練として川平法を導入した。評価は、12段階片麻痺回復グレード法(以下上田式)・STEF・肩関節ROM(座位)・片麻痺上肢機能テスト(以下実用度テスト)にて前後評価を行い、その促通効果を判定した。
【結果】
 全例に機能あるいは能力改善が見られた。症例(1)(グレード・STEF・肩関節ROM・実用度テストの順にて) グレード3→グレード5、0点→2点、30°→45°補助手A→補助手A、症例(2)グレード9→グレード11、52点→69点、90°→170°実用手A→実用手A、症例(3)グレード8→グレード10、55→53点、130°→130°実用手A→実用手Aと向上した。
【考察】
 改善に至った経緯としては、1)ADLで麻痺側上肢の使用頻度が少ない事、2)反復して運動性下行路の強化がそれまでの通所リハの中であまり行われていなかった事、3)リハビリの内容として比較的下肢機能へのリハビリが多く行われている事が挙がる。症例(1)は、痙性が強くそのパターンから逸脱しにくい状況にあったが、ADLで服の裾を捲り上げるやすくなっていた。症例(2)は、皿洗いで食器を落とさなくなった、ボタン動作がスムーズに出来るようになっていた。症例(3)は若干STEFは下がるが、元々ADLで上肢の使用頻度と麻痺レベルも高くADLに支障をきたしていないが機能面での改善が図られていた。維持期の脳卒中患者に対しリハビリが行われている目標は、機能維持がほとんどであるが今回は、回数が少ない中でも、川平法を用いて運動性下行路の強化を行うことでの改善が得られた。以上の事から、維持期の患者に対しても積極的に上肢へのアプローチを行う事が重要であると考える。症例3名に対して承諾は得ている。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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