九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 022
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訪問看護利用者の理学療法ニーズの検討
*神谷 之美
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抄録

【目的】
 平成18年度の医療・介護保険診療報酬改正により「訪問看護ステーションからの看護師、保健師の訪問数より理学療法士の訪問数が上回ってはならない」という解釈がなされそのことにより多くの訪問リハビリテーション(以下訪問リハと略す)の現場では適切な訪問回数、内容が提供できないという声が聞かれる。今回当ステーションでは訪問依頼時に訪問リハの希望か否かにかかわらず、承諾を得た上で、理学療法士(以下PTと略す)が看護師に同伴し、PTの立場から評価することで訪問看護利用者の理学療法の潜在的ニーズを調査、検討したので報告する。
【対象・方法】
 平成18年9月1日から平成19年3月31日までに当ステーションに訪問依頼のあった19件。事前に利用者、家族、ケアマネージャーの承諾を得て初回、或いは2回目訪問時にPTが同伴し利用者の身体能力評価、ADL評価,家屋環境、介護状況の評価を実施した。終了後同伴訪問への感想を自由意見で聞き取りした。
【結果】
 19件全件においてPTの視点から助言、指導を行った。特に家屋環境、介護方法の指導は病院退院時にリハビリテーションスタッフから指導、助言を受けたケースが大半にもかかわらず、再度助言を必要とするケースが多く、継続したフォローの必要性を感じた。同伴訪問後の感想は全件が「来てもらってよかった」と好意的であり、当初訪問看護の依頼のみであった8件中4件が新たに訪問リハの計画が追加された。家族は「介護方法の指導」、ケアマネージャーは「環境整備」「リハビリのメニュー」への関心が高かった。
【考察】
 従来、訪問は依頼のあったケースのみへ対応する事が多いが、今回の同伴訪問により未だPTの専門性を活かせる潜在的ニーズが多い事が実感できた。利用者の身体機能への直接関与にとどまらず、環境、介護を含めた生活評価においてもPTは専門職として積極的な技術、情報提供を行う事で、訪問分野でのPTの活躍の場を拡大できると期待できる。今後はチームである看護師、ケアマネジャーへの啓蒙活動も必要と考える。
【まとめ】
 1.訪問看護利用者へ理学療法ニーズの調査のため同伴訪問を実施した。2.環境整備、介護指導へのニーズが高かった。3.看護師、ケアマネージャーへの啓蒙活動の必要性がある。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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