九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 021
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地域在住高齢者の身体活動量に影響を及ぼす要因の検討
*渡辺 博釜崎 俊彦水上 諭北田 智則金ヶ江 光生
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抄録

【目的】
 高齢化社会が急速に進行している今日、高齢者が「健やかに老いる」にはどうすれば良いのかが社会的な課題となり、様々な地域で高齢者に対する健康増進事業や介護予防事業が進められている。現役を退いた高齢者は社会的役割が減り、社会的な関わりが少なくなりやすいことが想像できる。このような状況は高齢者の日常生活を非活動的にし、身体的生活機能のみならず、精神的及び社会的な生活機能を低下させる大きな要因になることが予想される。そこで、本研究では地域高齢者の身体活動量に影響を及ぼす要因の検討を行った。
【方法】
 対象は介護を必要としない自立した日常生活を営んでいる65歳以上の高齢者を対象とした。予め本研究の目的、注意事項などについて十分な説明を行い、研究協力の承諾を書面で得た後、身体機能検査および自己記入式アンケートを行った108名(男性42名、女性66名)を調査対象とした。
 調査項目は日常の身体活動量と過去一年間の転倒経験、Falls Efficacy Scale、老研式活動能力指標を自己記入式アンケートで調査した。身体機能としてFunctional Reach Test、膝伸筋力、膝屈筋力、足関節底背屈筋力、足関節自動底背屈可動域を測定した。
【結果】
 身体活動量の高活動群、低活動群を抽出しWilcoxon法にて検討を行った。高活動群と比較して低活動群は年齢が有意に高く、体重、老研式活動能力指標、体重比膝伸筋力、足関節自動底背屈角度は有意に低い値であった。有意差が確認された年齢、体重、老研式活動能力指標、体重比膝伸筋力、足関節自動底背屈角度の6項目のオッズ比を算出すると体重比膝伸筋力、足関節自動背屈角度のみが身体活動量に独立に影響していた。
【考察】
 身体活動量の低活動群においては膝伸筋力、足関節自動背屈角度が有意に低く、足関節自動背屈角度と膝伸筋力の低下が歩行能力低下を引き起こし、歩行能力低下から身体活動量の低下が引き起こされたと予想される。
 平均歩数が高いものほど総合的な生活体力や歩行能力の加齢に伴う低下が少なく、日常生活において歩数を高く維持することが、高齢者の生活体力の低下を抑制するための有効な対策になり得ることを北畠ら(1999)は報告している。加齢に伴って体力低下は避けられないものの、本研究でも地域在住の一般高齢者において身体活動量を高めるために下肢機能の保持と歩行の習慣が重要であることが示唆された。
 本研究は横断的研究であるために、身体活動量の低下に対する因果関係を示すものではない点に限界がある。高齢者の身体活動量の増加に向け有効な対策を立てる意味からも、縦断的な研究により高齢者の身体活動量が低下する原因について更なる検討が必要と思われる。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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