九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 017
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車いす意見書・処方箋検討による判定期間短縮の試み
~車いす判定状況調査結果から~
*浦川 純二岩永 弘人毎熊 美佳山口 孝人福田 優子廣岩 京子佐々木 多佳子
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キーワード: 車いす, 適合判定, 調査
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抄録

【はじめに】
 長崎こども・女性・障害者支援センター 障害者支援部更生相談課(以下、当センター)では自立支援給付における補装具の判定や意見書交付を実施している。なかでも車いすにおいてはモジュラー化や機能の多様化とともに障害や生活環境などに応じた用具を選択することが可能になり、生活機能の向上が認められている。その反面、ミスマッチによる能力低下を余儀なくされている例も少なくない。当センターではこれら不適合を防止するため、シーティングなどの適合相談や環境調査、研修などを実施しており一定の成果をあげてきた。しかし、意見書、処方箋、見積もり書などの記載内容の不備や不整合などにより追加調査を実施する例が少なくない。今回、車いす交付に関する追加調査の状況を調査し、その結果から意見書、処方箋の見直しを行うことで福祉サービス向上を図ったので報告する。
【対象と方法】
 平成18年4月1日から12月31日までの期間、当センターで車いすの判定を実施した121名のうち、平成19年2月末時点で適合判定が未実施のものを除く115名(文書判定58名 来所57名)を対象とした。年齢は43.8±19.9歳で、男性71名 女性44名。障害種別は肢体不自由111名、内部障害4名であった。調査は受理から判定までの日数について、文書判定と来所判定、調査の有無などに分けて算出した。また、文書判定における追加調査の内容について分類した。なお、差の検定には対応のあるt検定を、相関の検討はピアソンの積率相関係数を用いた。
【結果】
 追加調査実施割合は、文書判定では56%、来所判定では21%であった。それぞれ受理から交付までの平均日数は、文書判定調査有り38.9日、調査無し7.3日、来所判定調査有り45.8日、調査無し13.7日でありそれぞれ有意に差が認められた(P<0.001)また、追加調査を実施した回数と受理から交付までの日数には高い相関が認められた。(P<0.001)追加調査の内容は、処方箋不備が全体の49%を占め、意見書不備27%、調査書不備9%、見積書不備6%と続いた。
【考察】
 車いすの判定には身体、障害状況と車いす仕様の詳細や環境適応などの情報が必要不可欠で、市町からの環境調査書のみならず意見書、処方箋記載には確実性が求められる。車いすの文書判定件数の半数以上にわたり追加調査を実施している現状から、その頻度の高い意見書、処方箋では情報が不十分であると考えらた。今回の調査結果から追加調査回数が増えることで交付期間遅延が生じていることが明らかとなったため、期間短縮による福祉サービスの向上を目的とした様式の改訂を行った。内容は障害状況全般、車いす操作能力と使用環境、車いすの仕様、使用目的と効果などについて具体的記載を求め、判定に必要な情報を的確に得られるよう項目を作成した。また、改訂前後での調査状況の変化など経過も踏まえ報告する。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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