九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 110
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姿勢の改善により食事が自力摂取可能となった一症例
*東山 みどり野崎 加代子梅田 理絵佐藤 俊彦井上 智子
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キーワード: 姿勢, 座位保持能力, 食事
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抄録

【はじめに】
今回脳出血となり座位保持能力の低下をきたした症例に対し、座位姿勢改善を目的にアプローチを行った結果、食事が車椅子にて自力摂取可能となったため報告する。
【症例紹介】
50歳代後半の女性で、H19.9.30に左被殻出血を発症し、右片麻痺・嚥下障害を呈した症例。既往としてH12年より脳出血、脳梗塞を数回繰り返したことで左片麻痺を呈しており、又転倒による左大腿骨頸部骨折やTh12圧迫骨折があり、元々ADLも見守り~一部介助レベルの状態であった。今回の発症により、右上下肢・手指ともにグレード11と軽度の麻痺ではあったが、両片麻痺による右上下肢の筋緊張低下や体幹・骨盤周囲筋の支持性低下により立ち直り反応も見られ難く、そのためリクライニング式車椅子座位姿勢不良で座位保持時間も20分程度しか行えず、重度の廃用症候群に陥り、また基本動作・ADLにおいて全介助を要す状態であった。
【経過】
当初、抗重力筋の筋力低下によりリクライニング式車椅子にて座位保持困難、頚部・体幹重度屈曲・左側屈姿勢により頚部・体幹の正中位保持困難となり、食事においても飲み込みの低下が見られた。主目標は「日中普通型車椅子座位で過ごすことができる」とし、副目標は「普通型車椅子座位の安定、普通型車椅子座位での食事自立、その他ADLの介助量軽減」とした。そこで、食事時の車椅子座位保持能力向上を目的に骨盤・体幹の抗重力筋の出力向上のため、両側LLB使用にて前腕支持でのもたれ立位を実施した。また、リクライニング式車椅子座位では背もたれ60度にしてクッションを腋窩と両大腿外側にセッティングした。この結果、頚部・体幹正中位での飲み込みが可能となり、体幹屈曲・側屈の軽減が図れた。そこで抗重力筋の持久力向上、重心移動に伴う動的座位バランス能力向上を目的に、立位保持訓練で保持時間の延長を行うと共に、座位での骨盤前傾の促し、リーチ動作を実施した。それにより車椅子座位での姿勢の安定と上肢操作能力向上し、約1ヶ月後、普通型車椅子での食事が自力摂取可能となった。
【考察】
当初、両片麻痺となり又重度の廃用症候群にも陥っていたことで骨盤後傾し頚部・体幹の正中位保持が困難となっていた。このことが食事動作の介助量増大の原因と考えた。まず立位訓練により、骨盤周囲筋・頚部・体幹の抗重力筋の出力向上を促したことで、骨盤前傾位と頚部・体幹の正中位保持が可能となり、静的座位保持が可能となった。次に、座位での骨盤の前傾の動きを促し、動的な座位保持における体幹機能が向上したことで、食事動作における上肢の操作が可能となった。またシーティングを行ったことで、正中位保持での座位保持の安定につながった。これらのアプローチにより安定した車椅子座位での食事が自力で可能となったと考える。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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