九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 12
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急性期病院における脳血管障害患者への取り組み
~PT・OT・STの専門性を活かして~
*平野 真美東谷 成晃中村 智子辻 武寿
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キーワード: 急性期, 専門性, 脳血管障害
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抄録

【はじめに】
 当院では十分なリスク管理のもと早期離床を図り、機能回復を促進させ、ADL向上を目指す目的でリハを実施している。H19年度より2名のOTが介入し、PT4名、OT2名、ST2名となったが、PT・OTの併用は実施しておらず、各職種の専門性が発揮できていない状況であった。しかしH20年度からの取り組みに向けて今回、脳血管障害患者に対して、PT・OT・STの各専門性を活かしながらチームアプローチを試みた結果、効果が得られたので考察し報告する。
【症例紹介】
 50代男性 診断名:左被殻出血 <初期評価>JCS:30 Br.stage(Rt)I-I-I 感覚:右上下肢脱失 高次脳機能障害:失語症、右半側失認 ADL:全介助 <最終評価>JCS:1 Br.stage(Rt)I~II-I-II 感覚:右上下肢鈍麻~脱失 ADL:起居物的介助あり監視、排泄:尿器・オムツ併用、食事・整容:左上肢使用で監視~自立、移動:車椅子駆動自立
【画像所見】
 左被殻出血:左側脳室を圧迫 正中偏位は軽度
【経過】
1週目:降圧剤の持続投与。脳圧亢進対策施行中。入院翌日よりBed SideにてOT・ST開始。2週目:ICUから一般病棟へ。バイタル安定した為PT介入。3週目:端座位開始。車椅子座位での食事・整容動作開始。耐久性向上に繋がり起立開始。4週目:右半側への注意力に向上がみられ起居動作が監視となり、食事・整容・車椅子駆動自立。5週目:端座位でのバランスが向上してきたため、動的バランスも兼ねて靴・上下衣の着脱を開始。体幹筋力や麻痺側下肢の支持性の向上が認められ、起立・移乗動作の介助量が軽減。6週目:端座位での靴・上衣着脱監視レベルへ。7週目:転院。
【考察】
 本症例に対して各職種での専門性を活かすとともに、互いの専門性を共有した。PT・OTが併用したことにより治療時間が拡大し、多角的かつ多様な側面からアプローチすることができた。PTは姿勢バランスや基本動作の中からADLに繋げ、OTはADL(一般的セルフケアの他、ベッドでの安定した生活)や高次脳機能、家族サポートを通して機能向上に努めた。STは失語症、摂食へのアプローチの中で機能面・ADL面にアプローチした。また現状把握をしていただくためにできる限り家族の来室時間に合わせてアプローチを行い、本人・家族・スタッフが統一した目標で進めていくようにした。これらのことが機能・ADL・精神面の改善に繋がったと考える。
【まとめ】
 脳血管障害の急性期医療において、高いリスクを要する患者に対しても、各職種が互いの専門性を十分に活かしながら全体像を把握し、効果的なリハビリテーションを提供していくことが今後も必要であると感じた。
 平均在院日数の減少や単位制の導入のなかで、急性期におけるアプローチの方法を各職種で検討し再構築していきたい。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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