九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 131
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統合失調症者における視覚的数字探索課題の遅延要因について
段階的探索負荷量変化課題を用いて
*四本 伸成薬師寺 京子芝 圭一郎濱尾 玲早高田橋 篤史東 祐二藤元 登四郎関根 正樹田村 俊世
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抄録

【はじめに】
統合失調症者の簡便な認知機能評価機器開発の試みとして,タッチパネル方式のモニタを利用したPCを用い,縦横6×6の36マス内に数字を同時かつランダムに提示し,1から順に36まで出来るだけ早く間違わないよう示指にて押し回答する方法の視覚的探索課題を提案してきた.前回研究より負担の少ない課題内容とする目的で,段階的に探索負荷量を変化させた課題を提供し関連性を調べている.今回は服薬量との関係と遅延の要因について検証したので報告する.
【対象】
DSM-IV診断による統合失調症者(以下SC群)32名(男性24名,女性8名,平均年齢40.66±8.95歳)と健常者(以下CR群)32名(男性18名,女性14名,平均年齢36.31±9.25歳)を対象とした.
【方法】
被験者に視覚的探索課題(以下W課題)を課した.W課題は縦横2×2の4マス(1~4の数字,以下W2課題)から順に縦横6×6の36マス(1~36の数字,以下W6課題)までの5種類を行い,一つの数字を押し回答する間の探索時間を計測し全課題において平均探索時間と最長および最短探索時間を求めた.また,服薬との関係を調べるためにSC群はCP換算量を算出した.比較の方法としてSC群とCR群間の差は分散分析で検定を行いp<0.01を有意とし,各群内における課題間の関連や服薬量との関係は相関係数を用いた.
【結果】
SC群とCR群間の平均探索時間の比較並びに最長と最短探索時間の比較では全課題で有意差を認めた.CP換算量との関係性は全課題で低い相関であった.各群内課題間における平均探索時間の関連性においてCR群ではW4W5~W4W6課題,W5W6課題で高い相関を認めたのに対し,SC群ではCR群の結果に加えW3W4~W3W6課題より高い相関を認めた.事象関連電位を基に平均探索時間を0秒から始めて0.5秒毎に分類し各秒間群における探索率を算出しSC群とCR群を比較してみると,SC群の探索率においてW2とW3課題では0秒以上~0.5秒未満群で有意に少なく,0.5秒以上1秒未満群以上の群で有意に多く.W4課題では0秒以上~0.5秒未満群で有意に少なく,1秒以上1.5秒未満群以上の群で有意に多く.W5課題では0.5秒以上1秒未満群以下の群で有意に少なく,1.5秒以上2秒未満群以上の群で有意多く.W6課題では0.5秒以上1秒未満群以下の群で有意に少なく,3.5秒以上4秒未満群以上の群で有意に多かった.
【考察】
SC群はCR群に比べ全課題で最長及び最短探索時間共に有意に遅く平均探索時間が遅延していた.CP換算量とは全課題で低い相関であったが,W課題間の関連性において処理数の少ない課題から高い相関を認め,選択的注意や作業記憶の能力と探索負荷量は密接に関係していると考えられた.各秒間群における探索率の比較ではW2とW3課題0.5秒,W4課題0.5秒~1秒,W5課題1秒~1.5秒,W6課題1秒~3.5秒を境に前後で有意差を認め,探索負荷量が増すにつれ探索時間が後方へシフトしていることが示唆された.

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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