主催: 社団法人日本理学療法士協会九州ブロック会・社団法人日本作業療法士会九州各県士会
【はじめに】
大腿骨近位部骨折患者において,退院の支援を行う際に、日常生活動作(Activities Of Daily Living:以下ADL)能力の検討は欠かせない.しかし,どれほどの期間が,ADL能力の上限に達するまでに必要なのかは明らかではない.
そこで本研究は大腿骨近位部骨折患者のADL能力が、上限に達するまでの期間について研究することとした.
【目的】
大腿骨近位部骨折患者のADL能力が上限に達するまでに必要な期間はどの程度なのか.また,術式によって期間に差があるか否か,を調査・検討することである.
【対象】
平成18年4月から平成20年3月までに当院回復期病棟に入院し退院した大腿骨近位部骨折の患者104例を対象とした.内訳は男性18例,女性86例で,平均年齢は79.3±8.3歳.在院日数は59.7±22.7日であった.術式については,人工骨頭33例,ガンマネイル31例,ハンソンピン17例,CHS15例,保存療法8例であった.<BR/> また,今回は指示入力が困難であるような重篤な認知症である患者は除外した.
【方法】
ADL能力の上限を退院時のFunctional Independence Measure(以下FIM)の値とし,手術日(保存療法は受傷日)からそのFIMに達するまでの期間を調査した.FIMは入院時,その後1ヶ月毎,退院時に施行し,比較した.
【結果】
大腿骨近位部骨折患者のFIMが上限に達するまでの期間は平均で2.3±0.9ヶ月であった.また術式別では,平均で人工骨頭2.6±0.9ヶ月,ガンマネイル2.3±1.0ヶ月,ハンソンピン1.7±0.8ヶ月,CHS2.2±0.8ヶ月,保存療法1.6±0.9ヶ月であった.
【考察】
今回の結果より,ハンソンピン,CHS,保存療法に比べ人工骨頭,ガンマネイルのほうが,ADL能力の上限に達する期間が長いことがわかった. これはガンマネイルでは骨折状態(不安定型)が悪いことと,カットアウトのリスクがあること,人工骨頭では脱臼肢位をとらないADL指導など,慎重に対応しなければならないことが多く,それらが期間に影響しているのではないかと考えた.
【まとめ】
大腿骨近位部骨折患者のADL能力が上限に達するまでに必要な期間は平均で2.3±0.9ヶ月である.また,術式によって期間に差がある.