九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 18
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洗体動作の自立に向けた自助具の活用
片手用の簡易洗体タオルの製作
*木村 久美子鳥巣 直子丹羽 敦
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キーワード: 洗体, 自助具, リーチ
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抄録

【はじめに】
片麻痺患者の入浴動作における洗体への介入について、幾種類かの自助具は紹介されているが介入効果の報告は少ない。今回、洗体が生活課題であった症例に対して、自助具の活用を検討し、片手で洗体可能な簡易タオルを独自で製作した。その活用により洗体動作が自立した事例を報告する。
【症例紹介】
66歳男性、右被殻出血後、左片麻痺。現在週2回通所リハ(要支援2)利用。Br-stage;上肢3手指5下肢5、麻痺側肩甲帯~上肢末梢部の関節可動域制限と痛み(安静時・運動時)を認める。軽度円背。著名な高次脳機能障害はない。FIM115/126点で入浴の洗体と更衣に介助を要す。洗体動作は、ナイロンタオル使用。非麻痺側手でリーチ可能な範囲は洗えるが、非麻痺側上肢(肩甲帯~腋窩、上肢全体)、背部(両側肩甲帯、胸腰椎移行部)が洗えなかった。また、家族は家業で忙しく、通所サービスでの入浴を希望していた。
【経過および結果】
洗体動作の自立を目標に、自助具の活用を検討した。市販の長柄ブラシ(直線・彎曲)では、背部を洗う為の上からのリーチが肩甲骨上縁程度までしか届かなかった。下からのリーチでは手元が視界から外れる背側での操作となり、ブラシの体表面への全面接触は困難であった。ループ付きタオルでは麻痺側手の固定部が連合反応の影響で不安定となった。どちらも非麻痺側手での操作性とリーチ範囲に課題を残した。また非麻痺側上肢の洗体は不可能であった。そこで、縦半分に折った2枚のナイロンタオルを縫い合わせ輪状にした洗体タオルを製作した。輪の中に体幹を通した状態で、手元が視界に入る腹側の位置において、非麻痺側手でタオルの端をしぼり、左右に動かすことで洗体動作を行った。また背部全面が洗えるよう上下にタオルを移動させた。非麻痺側上腕部は、体幹と共に輪を通し同様の動作で洗い、前腕部は大腿の上でこすりつけた。この方法で1度の指導により操作可能となり、受け入れも良好であった。その後、通所リハ、自宅での数回の訓練の結果、ほぼ全身の洗体が可能となった。
【考察】
市販の長柄ブラシやループ付きタオルで背部全面を洗うには、肩・肘・手関節の複合的な運動が必要とされ、特に肩関節伸展内旋方向の運動が加わることで操作性が急に低下したと考える。また努力的な操作により連合反応が出現し、上部体幹の屈曲傾向が強まることで、上肢と体幹の協調的な運動が得られず、ブラシの全面接触が困難となり、リーチ範囲に限界が生じていると考える。作成した片手用の簡易洗体タオルでは、タオルの大きな輪の全面が接触でき、さらに視界に入る腹側での非麻痺側手の操作(肩・肘・手関節の運動)に無理が無く、努力的な操作も少ない。このことで非麻痺側手の操作性の向上、リーチ範囲の拡大に繋がり、洗体動作が自立したと考える。

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