九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 21
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高齢者における視覚機能がADLに及ぼす影響
~転倒経験有無別の比較~
*釜崎 敏彦金ヶ江 光生坂本 健次渡邊 博水上 諭中倉 裕文平良 雄司山村 小百合石垣 尚男
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キーワード: 視覚機能, ADLスコア, 活動性
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抄録

【目的】
 高齢者における身体機能の維持・増大は、自立した健康的な生活を送る上で重要である。さらに、介護を必要とする高齢者の原因の一つに転倒がある。高齢者の転倒経験は、転倒に対する恐怖感により、日々の活動性を制限するといわれている(Lawrence et al, 1998)。一方、日常生活における環境要因として、外部環境の情報入力上重要な役割をもつ視覚機能は、聴力、筋力、バランス機能、歩行機能などの身体機能と同様に加齢に伴い低下する(Jay JL et al, 1987・安村ら, 1997)と報告しており、日常生活動作(以下、ADL)を低下させる一要因と考えられる。そこで身体活動の起点となる視覚機能に着目し、日常生活で外部環境の立体的把握を集約する静止視力、周辺視野の視覚機能とADLとの関連を転倒経験有無別に分類し検討することである。
【対象及び方法】
 自立歩行可能な精神・知的障害を有しない外来通院患者で、研究調査の承諾が得られた男女57名(男性21名、女性36名、平均年齢76.7±5.8歳)を対象とした。調査項目は、質問紙にて性別、年齢、既往歴、現病歴、過去1年間の転倒経験の有無、老研式活動能力指標(以下、ADLスコア)を聴取した。視覚機能としては静止視力、周辺視野を測定した。静止視力はランドルト環を用い、また周辺視野は石垣らが考案した視覚機能測定ソフトを使用し、認識率で算出した。過去1年間の転倒経験有無の結果より転倒群(18名)と非転倒群(39名)に分類した。それぞれの日常状態での静止視力と周辺視野の中央値をcut off値とし、低視力群・狭視野群、高視力群・広視野群の2群に分類し、ADLスコアを結果変数とし比較検討した。また2群間比較はMann-WhitneyのU検定を用いた。
【結果】
1) 転倒群において、ADLスコアを低視力群と高視力群の2群、および狭視野群と広視野群の2群で比較した結果、両群間に有意差を認めなかった。
2) 非転倒群において、ADLスコアを低視力群と高視力群の2群、および狭視野群と広視野群の2群で比較した結果、低視力群および狭視野群で有意に低値であった(p<0.05)。
【考察】
 本研究結果から、非転倒経験者において、静止視力および周辺視野がADLスコアに影響を及ぼすことが明らかとなった。転倒経験者は、転倒経験による恐怖感などから活動を控える傾向にあるのに対し、非転倒経験者は、積極(自発)的に活動する傾向にある為、視覚機能による外部環境の情報入力の差がADLに影響したと考えられる。今回の結果から、周囲の立体的把握を集約する静止視力や周辺視野などの視覚機能は、日常生活を営む上で重要な要素であることが再認識された。今後、ADLの維持・増大を目的としたプログラムを検討していく上で、身体機能と同様に視覚機能の維持・改善は、重要な取り組み(介入)の一つになると考える。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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