九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 219
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回復期リハビリテーション病棟における情報共有シートの効果
*有村 真琴坂下 亜由子折田 一隆笠野 大輔
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抄録

【はじめに】
 左視床梗塞により強い不随意運動と感覚脱失、視力低下を発症し、介助方法が特殊であった一例を経験した。当院で作成した情報共有シートを用い回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)スタッフ間での情報と介助方法を共有し、在宅復帰に繋がる事を経験できた。若干の知見を得る事ができたので以下に報告する。
【症例紹介】
 81歳、女性、右利き。左視床梗塞をX年2月中旬発症。右上下肢感覚脱失、左顔面神経麻痺、左全盲、右視力低下、右上下肢不随意運動、左上下肢Pusher現象、排尿困難を認めた。コミュニケーションは短文レベル。バーテルインデックス(以下BI)は0点。同時期のCTで視床外側に低吸収域を認めた。主訴はトイレに行けるようになりたい。家族は施設入所を希望。
【方法】
 回復期リハ病棟において算定可能な単位を原則とし、作業療法主担当4単位、理学療法2単位、言語聴覚療法1単位を5日/週実施。作業療法訓練内容はI期(X年2月下旬~X年3月初旬)(1)臥位での筋緊張調整(2)聴覚フィードバックでの不随意運動修正(3)端座位にて右上肢弾性包帯固定してのバランス訓練。II期(X年3月初旬~X年4月中旬)(1)動的座位バランス訓練(2)立ち上がり訓練(3)移乗動作訓練(4)トイレ動作訓練(5)病棟看護師・看護助手への介助指導(6)家族への介助指導(7)家屋調査を実施した。その他情報共有シートの記入、定期的なカンファレンスを開催した。
【経過】
 訓練開始時、リハビリテーション担当者、回復期リハ病棟スタッフ間の介助方法が様々で、病棟スタッフと本症例に混乱が生じていた。また、尿閉により導尿での管理が必要であり、家族は在宅に対し否定的で施設入所を望まれていた。当院で作成した情報共有シートにより回復期リハ病棟スッタフ間の情報の整理を行い、定期的なカンファレンスを開催。最初はセラピスト間で介助方法を統一させ、回復期リハ病棟スタッフや家族でも同様の事が行えるか検討した。訓練時の基本動作で介助量の軽減みられたため、病棟スタッフに介助方法を指導し介助方法の統一を図った。結果、統一された介助方法が定着する事により、トイレでの排尿回数増え、排尿が可能となった。BI25点へ改善し、家族の在宅希望がきかれるようになった。家族への移乗やトイレ動作の介助指導を実施。家族介助での移乗動作、トイレ動作が可能となった。介護保険サービス調整し、家屋改修実施され自宅退院の運びとなった。
【考察とまとめ】
(1)情報共有シートを用いて情報の整理を行った事により、スタッフ間での情報統一ができた。
(2)介助方法を統一し、セラピスト、スタッフ、家族で介助方法を共有する事により、介助方法を症例に定着する事ができた。
(3)介助方法が定着した事により、在宅復帰を獲得する事ができた。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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