九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 25
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視覚障害・知的障害を合併する児への取り組み
~粗大運動のひろがりを目的に~
*佐藤 公明神野 清香原 寛道
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抄録

【はじめに】
今回視覚障害と知的障害を持つ児を担当した。周りの状況が理解出来にくく、自分と関係の深いものや好きな感覚以外は興味もなく、自発的な活動も殆どない状況にあった。そこで運動発達を目的に現在使用している感覚を利用し発達を促した結果、粗大運動に変化が出て来た。理学療法場面での取り組みを経過と考察を加え報告する。
【対象】
6歳女児、診断名は視覚障害および知的障害を伴う運動発達遅延。左目義眼、右目は強い光を感じる程度。3歳時よりPT開始。当時は物を触るなどの経験がなく動作の理解や人との位置把握が困難。名前呼びは両親の声であれば返答があった。知らない場所や大きな音は苦手で泣く。自分の体を揺らして遊ぶことが多かった。自発的な粗大運動は殆どないが介助にて胡坐座位、立位、立ち上がりは可能だが嫌がることが多かった。
【経過・結果】
1.言葉・動作の理解を促す:PT・OT間で統一した設定(名前呼び・声掛け・ボディタッチ・感覚遊び・場所)で行う。その後PT介助で動作を促す。徐々に名前呼びに反応、自発的な起き上がり・座位やPTを探す動作が見られた。
2.症例とPTとの位置や方向の認知を促す:左右後ろからは声掛けだけでは反応が不十分であった為、呼ぶ方向から児に触れるようにした。その後、手で探って座位にて方向転換できるようになった。またPTの衣服に掴ることが多くなった。座位→四つ這い支持が可能。
3.移動を促す:症例とPTとの位置を徐々に離し声掛けを行うようにした。その後どの方向からでも名前呼びから座位→四つ這い→四つ這い移動→掴って立ち上がるが可能。
【考察】
症例はPT開始時、聴覚からの人の弁別、慣れた場所などの認知、介助による動作が可能であった。目が見えないことで自分に対する認識、ボディイメージの未熟さ、身体的な状況の理解が困難で何をされているか分からない恐怖感があることが考えられた。その為、症例自身や関わりの多い人を認識してもらうこと、安心して動けるように体幹をサポートし動作を行いやすいようにした。これがボディイメージを高め、精神的な不安が解消し、自分の状況や周りの環境が認識できるようになった。これが言葉と動作が結びつき、自発的な粗大運動の増加に繋がったと考えられる。
また周囲の環境に興味が出てきて手探り動作が増え、自発的に手を出すようになった。これが触覚での認知を促し、重心移動を経験することができたが、筋力の弱さによる恐怖感があった。そのため重心移動に対するバランスをサポートすることでPTに触れる機会が多くなり、高いところや前後左右へ手を伸ばすことが多くなった。これが症例の中での空間の幅を広げ、動作の成功体験により自発的な立位や四つ這い移動が発達したと考える。今後の課題として危険認知を含め、認知できる幅を広げ、安全に移動できる手段を促していきたい。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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