九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 26
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重症心身障害児の日常姿勢支援
休息と家族との関わりのための背臥位
*副島 直子糸田 富得山田 佳苗加藤 裕幸
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キーワード: 脳性麻痺, 生活時間, 姿勢
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抄録

【はじめに】
今回、在宅で生活する重度の脳性麻痺児を担当した。症例は坐位の耐久性が低いため1日の大半を非対称性を強めた背臥位で過ごしており、呼吸や睡眠などの日常生活に支障をきたし、さらに胸郭や股関節の変形が生じつつある状況であった。そこで楽に休息できる背臥位の獲得と変形の予防、家族との関わりに着目し、在宅での姿勢支援を行ったため報告する。
【症例紹介】
5歳、男児。診断名は脳性麻痺(痙直型四肢麻痺)。GMFCSレベルV、ROM・胸郭測定・Goldsmith指数にて非対称性を認める。快・不快の表出は全身の筋緊張を強めて行う。
【背臥位姿勢評価】
対称的姿勢の保持が困難でありATNR肢位と頸部・体幹過進展・下肢は右へwind blownとなる右半側臥位が多い。接触支持面は右側頭部・右肩甲帯・右側胸廓・左側骨盤の狭い範囲に集中し、押し付けがみられる。右半側臥位時は呼吸・脈拍が変動し苦痛のため更に筋緊張を強め、母親が頻繁に体位変換をする必要がある。また表情に乏しく、周囲の探索的な眼球運動は殆どみられない。声掛け等の周囲からの関わりに対し全身の筋緊張を強め視線移動が活発となるが、頚部の回旋が不十分であり視線を合わせることが困難。
【方法】
対称的で広い接触支持面を作り出し、押し付けの軽減を図るため膝窩と頭頚部下・腰椎下にウレタンを、骨盤・胸郭の両側にブックスタンドを配置し、その上に低反発マットを敷くことで、症例の動きの自由度を損なわない深さでマットが沈む形状とした。
【結果】
対称的姿勢の保持が可能となり、右半側臥位時の頸部過伸展と下肢のwind blownは改善、接触支持面は正中方向へ拡大した。呼吸・脈拍は安定し、頻繁に体位変換をする必要がなくなり、家族の介助量が減少した。自発的な頭部の回旋範囲が拡大し、周囲の探索的な眼球運動が見られるようになった。表情は落ち着き、家族と視線が合い、あやすと笑うという相互的な関わりが可能となった。
【考察】
今回、接触支持面を変化させていくことで症例が持つ姿勢の多様性を損なわず、変形の増悪を防ぎ、休息と家族との関わりのための背臥位が可能となった。支援前は、自己の身体状況へ集中せざるを得ない状態であり、家族との関わりは一方的なものとなっていたが、その苦痛な姿勢から開放されたことで他者への興味が生じ、これまでの筋緊張による表出から本来持っていた表情・視線を使った表出能力を発揮することが可能となったと考えられる。症例の今後の課題として、日常姿勢のバリエーションの増加と24時間の姿勢管理の検討、表出手段・内容の向上がある。今後も変形予防とともに症例が家族や社会のなかで他者と関わりあいながら成長していくための支援を行っていきたい。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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