九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 32
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脳性まひ者に対するフィットネス活動の取り組みについて
*山下 直子木下 義博田中 亮山下 雅代園田 かおり伊藤 雄
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抄録

【はじめに】
 ICIDHからICFへと変わり、理学療法における脳性まひ者に対するアプローチも変化してきている。そのため、脳性まひを持つ人の健康管理やフィットネス活動、筋骨格系の二次的障害予防が注目を集めている。さらに、家庭や学校・コミュニティーなどでの社会活動への参加が促進されてきている。そこで当施設では、粗大運動能力分類システム(以下GMFCS)レベルIの脳性まひ者を対象にフィットネス活動に取り組んできた。目的は1.筋力・持久力・柔軟性を含めた健康状態を維持する、2.健康管理できる能力を身に付ける、3. 同年代の人との交流・情報交換の場となる、4. 社会参加へのステップの場となるとした。今回、この活動の具体的なプログラムと対象者へのアンケート調査の結果を報告する。
【対象】
  GMFCSレベルIの脳性まひ者4名(両まひ1名、片まひ3名)平均年齢19歳(高校生~社会人)
【方法】
1.平成19年4月より開始。月に2回の頻度で1時間実施。
2.年間プログラムを立案し様々なスポーツに取り組む。
3.プログラムは目的別に種目を設定する。(筋力:筋力トレーニング、持久性:マラソン・水泳、柔軟性:ストレッチ・バルーン体操、協調性:キャッチボール・バトミントン・バスケット)
4.年2回の体力測定を行い定期的に身体機能を確認する。
5.ストレッチを中心としたホームプログラムを提示し、自己管理できる環境を整える。
6.アンケートを配布し、1年間の取り組みに関して対象者から意見を聴取する。
【結果】
 1年間で6種のスポーツを実施できた。多人数で行うことで団体競技にも取り組むことができ、スポーツの幅が広がった。しかし、ホームプログラムを実施できた人は少なかった。また、体力測定の結果からは著しい変化は認められなかった。身体機能の著明な変化は得られなかったが、アンケートの結果より1年間の活動は対象者にとって充実した取り組みであり、今後も継続して行いたいという意見が得られた。
【考察と今後の方針】
 1年間の活動を通して、いくつかの課題が残った。ホームプログラムを徹底して実施できた人が少なかったという結果を受け、幼いころから受身的な理学療法を受け続けてきた彼らは、“自ら取り組む”という意識が低く、経験も少ないことが分かった。活動開始2年目となる平成20年度には、学習会を実施し対象者が理学療法士と共にプログラムを立案できる様にする。また、対象者同士が話し合い意見交換できる環境にする。さらに、体力測定の評価方法をもう一度見直し、数値化や点数化できる項目を選んで対象者自身が変化を敏感に感じ取れるようにする。 対象者が自己の変化・課題を明確にして意欲を高め、“自己選択・自己実践”を目指して取り組んでいけるようにサポートしていきたい。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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