九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 33
会議情報

Costello症候群の食事指導を経験して
*佐藤 千紗仮屋 成美若松 まり子梶原 佳奈丸田 恭子佐野 のぞみ
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
 Costello症候群は精神運動発達遅滞、哺乳摂食障害、肥大型心筋症、手足の緩い皮膚などを有する先天的な症候群である。また、乳児期に強い人見知り、触覚に対する過敏性を認めるといわれている。今回、本症候群の症例について食事指導を行ったので報告する。
【症例紹介】
 出生後から哺乳困難のため、経管栄養を施行されていた。2003年5月(0歳4ヶ月)より理学療法を開始した。
【評価】
 2歳8ヶ月から作業療法(以下OT)を開始した。全身の低緊張を認めた。粗大運動は自力での座位、ずり這い移動可能。初めて見る人や物・環境に対して極度に緊張した。口唇閉鎖の持続は困難で、流涎が多かった。巨舌で、左右の動きが弱く、口腔内に過敏があり、食べ物を口にするのを拒んだ。
【経過】
 第1期(2歳8ヶ月~)
OT場面では、激しく泣き続け、母親から離れられない状況であった。一方、一人で本を見るなど遊ぶことができた。そこで症例と母親との遊びを中心として、作業療法士(以下OTR)は、母親に活動の展開を指示する形で関わったところ、徐々に直接介入ができるようになった。体幹の支持性を高め、両手動作を促すために、ビーズをかけあうなど、やりとりを楽しむ感覚遊びを実施した。しかし、食事は経管栄養であった。
 第2期(3歳0ヶ月~)
Costello症候群と診断された。Costello症候群の共通臨床像である、極度の人見知りや摂食困難など、症例の理解ができ、母親は安心した。またOTの方向性の確認ができた。ままごとを通した食事場面を導入し、スプーン操作などの道具を用いた両手協調動作を促した。
 第3期(3歳7ヶ月~)
食べ物を口に含み、味わった後、出す行為がみられた。食べることへの興味が拡がったと解釈し、症例と共に味わう、食事場面を導入した。
 第4期(4歳5ヶ月~)
出していた固形食を嚥下するようになり、母親に食物を要求するようになった。嚥下造影を実施したが、誤嚥など嚥下障害は認められなかったため、5歳2ヶ月で経管栄養を中止した。
 現在(7歳10ヶ月)は、食事を楽しんでいる。上肢の巧緻性と認知機能の向上を目的としたOTを行っている。
【結果】
 Costello症候群の症例が、約3年間かけて楽しみながら食事を摂るようになった。
【考察】
 Costello症候群の特徴でもある人や環境への馴染みにくさを理解することは、食事を援助するために重要である。哺乳摂食障害に対して「食べさせる」ことを焦らず、家族とともに症例の成長を見守ることは、両者(家族・症例)の心理的負担を軽減すると考える。OTRは「食」につながる間接的アプローチを行い、最終的に経口摂取を可能にした。

著者関連情報
© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top