九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 4
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状況認識と行動発現の整合性に問題を生じた左片麻痺者に対する治療経験
*福澤 至工藤 可奈子宮川 亜美
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抄録

【はじめに】
危険予測が困難で日常生活の安全な行為の成立が難しいクライアントを支援させてもらう機会を得た。高次脳機能面から考察した問題解決について報告し、検討したい。
【事例紹介】
65歳男性。中大脳動脈領域の脳梗塞により左片麻痺、構音障害を呈す。頚部脊柱管狭窄症の既往あり。急性期治療後リハビリ継続のため当センターに転院。農業への復職を希望。
入院時Br.stage上肢2~3、手指2~3、下肢4~5。麻痺側中等度感覚鈍麻。左上肢手の筋群は弛緩傾向、疼痛、手部に浮腫、熱感あり。BIT標準検査にて89/146点、左半側空間無視認め、左側への衝突、左上下肢を無視しての行動、動作時に周辺刺激に反応し、文脈に沿わない行為が頻回に見られ、転倒しかける事が多い。自ら着衣を行うと衣服と身体の関連が不十分となり自己修整困難となり、左手の痛みを招き、不安、焦燥感が多く不眠で疲れやすいと訴えがある。
【経過】
外界からの必要な情報を選択し、自然で効率的に背景文脈に沿った行動が発現することに困難を生じ、上肢手に著明な筋の弛緩傾向を認め、意識的努力でしか左手に注意を向けることが難しい背景から、基底核病変による選択性の困難さを、痛みや課題未達成が情動系に不快な情報を送り続け意識的注意が内部に向き、外部の状況把握が十分に行えず、助長していると仮説。身体の不安定さに対し、徒手介入による弛緩筋の活動促進を図った。痛みに対し、左手での道具操作・手洗い等の両手活動を能動的に行える機会を作り、身体図式の改善、左空間への認識しやすい姿勢制御機構、麻痺肢の自己管理を求めた。日常未達成な課題に対し、入浴・更衣の実際場面に介入し麻痺肢の自己管理・身体の安定を援助し、クライアントの能力に適した肢位を誘導し、成功体験を重ねるよう介入した。
【成果】
2ヵ月後、BIT標準検査89/146点、から138/146点に向上し、移動時の危険性が減少した。更衣も能動的に行う際に修整を要す事が減り、左手で袖をまくる、タオルで右手を洗うなど生活での使用が可能となった。自宅外泊も安全に行う事ができ、外泊時に仕事の一部に寄与できた話も聞くことができた。
【考察】
人間の社会生活においては常に様々な状況下で感覚情報を元に、適切な行動を選択する前頭前野を主とした機能発揮が必要である。高次脳機能に病変を生じた場合多くは社会的な面に問題を抱えてしまう。安定してきた内部環境で、クライアント自身がどうするべきか、行動を自己決定する場面を提供できたことで前頭前野が担う信念形成、ワーキングメモリ、基底核機能とも関連する適切な行動選択の役割が発揮され、文脈に沿った行動発現に寄与できたと推測する。
【おわりに】
発表に際し、快く承諾いただいたクライアントに深く感謝いたします。

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