九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 48
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腰椎椎間板ヘルニアに対する理学療法の一考察
*宮本 崇司羽田 清貴島澤 真一川嶌 眞人
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抄録

【はじめに】
腰椎椎間板ヘルニア患者では骨盤後傾位姿勢を呈していることが多く、腰椎屈曲位にてヘルニアが増強される為、骨盤中間位の獲得が重要である。しかし、突出方向によっては腰椎伸展にて症状が増強されることもあり、骨盤中間位の獲得だけでなく、骨盤帯アライメント改善に伴う腰椎生理的前弯の獲得が必要と考える。今回、椎間孔内型ヘルニアを呈し、骨盤中間位にて症状が増強した症例を経験した。骨盤帯アライメント不良による下部腰椎での過伸展が原因と考えアプローチした結果、症状が軽減した為報告する。
【症例紹介】
30歳代男性。診断名:腰椎椎間板ヘルニア、現病歴:2007年4月、腰痛が増強、下肢痛が出現し当院入院、6月外来理学療法開始。画像所見:レントゲンでは矢状面像で腰椎前弯減少、前額面像で腰椎左側屈。MRIではL3/L4右ヘルニア+、L4/L5左右椎間孔内ヘルニア+。
【理学療法評価】
疼痛は、座位骨盤中間位や立位後屈動作にて両臀部から下肢にかけてVisual Analogue Scale(以下VAS)にて10/10(左>右)が出現し、腰椎屈曲位にて軽減した。Straight leg raising testは陰性。腱反射は正常。左右腸腰筋、左中臀筋・前脛骨筋・母指伸筋のMMTが4と主に左L5領域の筋力低下を認めた。可動性は両股関節屈曲・内旋、脊柱右側屈、胸椎伸展、左胸郭に制限を認めた。骨盤アライメントは、両寛骨に対し仙骨のうなずきが強かった。座位姿勢は、骨盤後傾位で右下制、腰椎前弯減少、胸椎後弯増強し脊柱は左側屈・左回旋、上半身重心右後方変位を呈していた。立位姿勢は、骨盤左シフト・右回旋・後傾位でその他は座位姿勢と同様の変位を認め、左大腿筋膜張筋の緊張亢進を認めた。
【理学療法アプローチ】
骨盤帯アライメント改善運動。胸椎可動性改善運動。股関節機能改善運動。座位・立位にて骨盤中間位・正中化練習。
【結果】
座位骨盤中間位保持にて腰椎生理的前弯が軽度改善、疼痛消失した。立位後屈動作でも疼痛はVASにて3/10と減少し、左右差はなくなった。
【考察】
本症例の仕事は事務作業と車での移動が中心であり、骨盤後傾位姿勢での長時間座位がヘルニア発症の一要因と考えた。炎症期には骨盤後傾にて症状増強しており、股関節機能低下や胸椎伸展制限がある状態にて脊柱起立筋を過収縮させ疼痛増強姿勢を回避したことが、仙骨起き上がり不全の原因と考えた。また、左中臀筋筋力低下により、左大腿外側筋膜の受動要素に頼った立位姿勢が、腰椎左側屈の原因と考えた。この姿勢異常により骨盤中間位や後屈動作において下部腰椎が過伸展し、椎間孔狭窄による症状が出現したと考えた。アプローチの結果、骨盤帯アライメント改善・腰椎生理的前 弯の獲得により腰椎部での過伸展が減少し疼痛軽減に至ったと考えた。また、姿勢正中化により側屈変位が減少し疼痛に左右差がなくなったと考えた。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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