九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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当院での腰部疾患手術例におけるバリアンスの検討
*岸本 絵里大脇 秀一金澤 寿久
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抄録

【はじめに】
 当院では、腰部脊柱管狭窄症(以下、LCS)・腰椎椎間板ヘルニア(以下、LDH)に手術を実施した症例に、術後4週間(28日)退院を目途にクリニカルパスに沿った、リハビリテーションを実践している。その中で、クリニカルパスバリアンス例を度々経験している。そこで、バリアンスの要因検討を行ったので報告する。
【対象・方法】
対象は、2006年4月~2007年12月までに、腰部の手術を行い、当院を退院した患者67例(男性:36例、女性:31例)、平均年齢69±12歳である。疾患の内訳は、LCS:53例・LDH:14例、術式の内訳は腰椎椎弓切除術35例・開窓術23例・LOVE法6例・後方髄核摘出術3例であった。平均切除椎間数は2±0.9椎間であった。 方法は、術後在院日数28日内に退院した症例を非バリアンス群(以下、A群)(n=18)とし、29日を越えた症例をバリアンス群(以下、B群)(n=49)と分類した。バリアンスの検討要因として両群の(1)年齢、(2)椎間数、(3)手術回数、(4)内科的・整形外科的な合併症の有無、(5)術後歩行自立までの期間、(6)日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(以下、判定基準)因子の術前・術後について、比較検討した。尚、統計方法としてはMann whitney検定、2サンプル比率検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】
(1)~(4)年齢(A群64.9±17.2歳・B群70.6±10.6歳)、椎間数(A群1.9±0.8椎間・B群2.0±1.0椎間)、手術回数(A群1.2±0.4回・B群1.2±0.5回)には、A・B群間ともに有意差は認められなかった。また、合併症の有無に関しては、A群:内科55.6%・整形外科33.3%、B群:内科61.2%・整形外科59.2%であり、両者ともに有意差は認められなかった。(5)術後歩行自立までの期間(A群:11.6±3.8日、B群:18.3±10.3日)において、A・B群間で有意差を認めた。(6)判定基準の術前・術後では、A・B群間(術前A群:17.6±4.8点・B群:15.9±3.2点、術後A群:18.7±5.5・B群12.5±5.8点)で有意差を認め、さらに各因子間では、1.疼痛では術後、2.機能評価では術前・術後、3.日常生活動作では術後で両群間に有意差を認めた。
【考察】
 今回の研究結果では、年齢・椎間数・手術回数・合併症の有無では、術後在院日数(バリアンス)に影響を与えない事が考えられた。判定基準では、術前・術後ともにA群が有意に高い傾向がみられた。この事よりバリアンスの要因として、1.術後疼痛が強い、2.術前・術後のROMや筋力などの機能面が低い、3.術後の日常生活動作能力に影響する、以上三点が推察された。また、B群は機能面が低い影響により、術後歩行自立までの日数も長くなる事が推察された。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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