九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 7
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麻痺側上肢に対する促通反復療法の効果
継続および間欠的導入における改善度の比較
*萬谷 和日子棚原 慶子
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キーワード: 脳卒中, 片麻痺, 上肢機能
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抄録

【目的】
近年、脳の可塑性の発見により、麻痺の回復には意図した運動の実現と反復が重要であることが報告されている。伸張反射等を用いて、運動性下行路の強化と再建を図る反復促通療法が川平によって開発されている(以下、川平法)。川平法による片麻痺上肢の改善効果は、平均罹病期間10週という回復期患者、平均罹病期間17.9週の慢性期患者において示されている。しかしこれらの検討は各パターン100回ずつの川平法2週を間欠的に実施したものである。
今回、我々は各パターン50および100回の継続例と50および100回の2週間間欠例に於ける麻痺改善の効果を比較したので報告する。
【対象】
対象はリハビリテーション目的で入院した脳卒中片麻痺の15例(年齢;59.5±15.1歳、罹病期間;6.8±2.0週、上肢機能: 上田12段階片麻痺グレード)で、罹病期間が6週未満、両側半球障害、上肢に著しい疼痛や感覚障害、拘縮、重度な認知症、半側空間無視は除外した。
【介入方法】
川平法の継続群には通常の作業療法(利き手交換訓練、日常生活動作訓練やサンディング、ペグなど)に川平法を集中的に8週間実施した。運動パターンは3パターンを症例の機能に合わせて選択し実施した。各パターンの運動回数は100回が1例、50回が3例である。
間欠群には通常の作業療法に2週間毎、川平法を追加した。運動回数は100回が10例、50回が1例である。統計的検定は2群間の比較はMann-WhitneyのU検定を、各群の治療前後の比較にはWilcoxon検定を行い、危険率5%以下を有意とした。
【結果】
1、対象全体(継続群と間欠群)の麻痺改善
対象全体の上肢グレード(中央値)は治療前が5、治療4週で8、治療8週で8となった。同様に、手指が3、7、7、STEFが0、0、16.5といずれも有意(p<0.05)に改善した。
2、継続群と間欠群の麻痺改善
継続群と間欠群の治療前における上肢グレードは6(G)と5(G)、手指4(G)と3(G)、STEF はともに0(点)と差は認めなかった。入院—治療4週、治療4週—治療8週、入院—治療8週の改善度は両群に大きな差はなかった。継続群と間欠群の年齢と罹病期間(平均)はそれぞれ61.3歳と54.3歳、6.9週と6.5週と差は認めなかった。
3、回数別の麻痺改善
継続群と間欠群における運動回数別では少数例での検討のため、統計学的解析が困難であった。
【考察】
片麻痺上肢へ継続的あるいは間欠的に川平法を実施し、いずれも麻痺改善を認めた。片麻痺上肢へ川平法を継続群と間欠群間の比較では、上肢機能改善に大きな差は認めなかった。それら理由としては2群間における運動回数に差があったことや少数例での検討のため、統計学的解析の限界に影響されたことが考えられる。
【まとめ】今後は、介入方法を統一した上での効率的な運動回数を検討していく必要がある。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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