主催: 社団法人日本理学療法士協会九州ブロック会・社団法人日本作業療法士会九州各県士会
【はじめに】
認知症高齢者の在宅生活を支援するためには,高齢者の認知症症状のコントロールや環境調整に加えて,効率的で効果的な家族支援が重要なポイントとなる.当デイサービスにおいても,認知症高齢者を介護する家族はそうでない家族に比べ介護による負担感が高い印象を受けるため,特に家族支援は重要視している.しかしながら,その家族支援は訴えの多い家族に集中することが多く,一様ではないため,予期しない在宅破たんケースも存在している.今回,これらの問題点を改善するために,認知症高齢者を在宅介護する家族を対象とした家族教室を試み,若干の知見を得たので以下に報告する.
【対象】
当デイサービスおよび隣接するデイケアで,認知症の診断を受けた29名の主介護者に介護負担アンケートを送付した.回収したアンケートおよび家族教室への参加を希望する家族の中で,本研究に同意の得られた,7名(男性1名,女性6名),平均年齢59.0±19.9歳を対象者とした.
【方法】
平成20年2月に家族に対して介護負担アンケート調査(Zarit介護負担尺度・介護肯定感尺度など)を実施した.同年3月に家族教室を開催し,終了直後にもアンケート調査を実施した.家族教室は,1)認知症の病気を理解するためのミニ講義,2)グループワークを実施した.グループワークでは,自己紹介を行った後に,情報交換や上手な介護のコツなどをテーマに話し,介護者同士の交流を促した.本研究では,家族教室前後のアンケート結果の比較,家族のアンケート結果と認知症高齢者の評価結果を比較し検討することとした.
【結果】
1)家族教室前後のアンケート調査結果を比較すると,Zarit介護負担尺度の得点が平均25.6±23.3点から平均18.7±7.5点,介護肯定感尺度の得点が平均19.6±17.3点から平均23.4±11.6点へと改善した.
2)Zarit介護負担尺度の下位項目では,認知症高齢者の行動に対する「困惑」や「頼られ感」が改善したが,「がんばって介護する」「もっと上手く介護できる」などの項では,得点が低下していた.一方,介護肯定感尺度では,「介護のおかげで難しい状況に対処する自信がついた」の項で目立った改善があった.3)家族教室の感想としては,「気持ちが楽になった。すごくパワーをもらった」「辛いのは自分達だけではないことがわかりホッとした」などの声があった.
【考察】
今回,認知症高齢者を在宅介護する家族を対象とし,アンケート調査や家族教室の取り組みを通して家族支援のあり方について検討していった.アンケート調査の結果から,家族教室が介護者の介護負担感を下げ,介護肯定感を上げることに影響を与えたと考えられる.しかし,1回の家族教室開催による効果が継続するとは考えにくいため,今後も定期的に家族教室を含めた家族支援を実施していく必要があると感じた.また,チーム内の情報共有や連携調整などの課題が明確になったので,今後も検討したい.