九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 76
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住環境整備におけるアウトカム検討
―顕在性不安検査、Zarit介護負担尺度日本語版を用いて―
*中野 真実佐藤 亮南 留美子福田 圭祐冨田 伸
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抄録

【はじめに】
理学療法士が行なう要介護者とその家族の在宅支援の一つに住環境整備が挙げられる。しかし実践の場においては住環境整備の成果を客観的調査に基づいて検討したものは少なく、対象者の主観的感想でその効果を判断している場合が多い。そこで今回住環境整備の有効性に関して顕在性不安検査(MAS)とZarit介護負担尺度(JZ)を用い調査検討したので報告する。
【対象】
対象は住環境整備として玄関スロープ設置と居室位置変更を予定している70歳代夫婦。糖尿病、神経病性膝関節症を呈した要介護度3の認定を受けている妻と主介護者である一般高齢者の夫とした。
【方法】
妻の在宅生活時から調査を開始、途中尿路感染にて入院を要したが住環境整備後に再度在宅復帰。その間妻にはADLテスト(BI)、MASを各5回、夫にはJZを4回実施した。住環境整備後に夫婦から感想を聴取し、それぞれの結果を比較検討した。
【結果】
1)在宅生活時BI70点、MAS23点、JZ50点。2)入院時BI55点、MAS26点、JZ42点。3)住環境整備後の外泊訓練後BI85点、MAS26点、JZ49点。4)退院前外出訓練後BI85点、MAS25点。5)在宅復帰後BI80点、MAS18点、JZ43点。夫婦からは心身ストレスも軽減し以前より快適な生活であるとの感想を得た。
【考察】
1)MASは疼痛と歩行時の膝関節不安定感増加等により身体能力低下を感じながら生活されており、住環境整備に対しても具体的効果をイメージする事が出来なかった為かなり高い不安感を、JZは要介護者の身体能力低下に伴い介護量が増加し高い介護負担感を示したと考える。2)MASは安静に伴う廃用によりADL能力が低下した為高度の不安感を、JZは直接的介護から開放された為介護負担感の減少を示したと考える。3)MASは外泊訓練により医療の充実した環境から急変する在宅生活が具体化された為高度の不安感を、JZは直接的な介護の再開を実感した為介護負担感の増加を示したと考える。4)MASは住環境整備とリハビリテーションにより円滑に外出や室内移動が可能となり、心身面への負担が軽減した為かなり高い不安感であるが低下を示したと考える。5)MASは新しい住環境に適応し身体的負担が軽減した為不安感は概ね正常域を、JZも介護量が軽減したことで介護負担感の減少を示したと考える。BIは住宅環境では歩行器で移動するには困難な箇所もあり移動能力に関し入院時に比べ低下している。
今回の住環境整備に関しては、住環境整備前後の在宅生活時を比較すると妻の不安感と夫の介護負担感の減少という各心理テストの結果と夫婦の主観的感想は一致しており、住環境整備は成果を得られたと考える。
【まとめ】
理学療法士として今後有効な住環境整備を実践するためには、客観的な調査によりその効果を検証し、データを蓄積し新たな提案が出来るよう努力することが重要である

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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