九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 79
会議情報

若年者の社会復帰への支援
~低酸素脳症の1症例を通して~
*小川 彰小泉 幸毅敷田 佳代宮岡 秀子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
若年者のリハビリテーション(以下リハ)では、機能・活動水準の改善に長期間を要すことも多く、かつ社会復帰においては他機関との連携が不可欠であると感じる。今回、回復期リハ病棟、障害者施設等一般(以下障害者)病棟、外来でのリハを実施しながら、養護学校へ入学し、更に就労を目指している症例のリハ経過と養護学校との連携について整理し、若年者の社会復帰への支援について考察する。なお演題として発表することに関して事前に保護者より了承を頂いた。
【入院時評価】
17歳男性(当時15歳)、低酸素脳症後遺症。当院入院時(発症後2.5ヵ月)四肢麻痺、構音障害、嚥下障害、高次脳機能障害を認めた。簡単な指示理解は可能だが、表出は単語レベルで聞き取りづらく発話は少ない。基本動作は寝返りは見守りで可能だが頚部・体幹のコントロールが不十分で、起き上がり以降は介助。ADLでは食事は軟飯・軟菜の刻み食にトロミをつけ全介助、他のADLも全介助。尿便意もなかった。
【経過】
1)回復期リハ病棟では、頸部・体幹へのアプローチと起居動作獲得を主目的に実施。リハ量は1日PT・OT・ST各2単位(障害者病棟、外来リハでも同単位)を週6日実施。約4.5ヵ月後、起居動作は寝返りが自立、起き上がり・立位・移乗が見守りとなった。普通型車椅子で、ADLは食事が口頭指示、更衣が見守りまで改善した。2)障害者病棟では、基本動作とADLの向上を目的に同量の同頻度を継続。約6ヵ月後に寝返りと座位が自立し、後方介助歩行が可能となった。この時期に「自宅退院と養護学校進学」という方針が決まり、退院前訪問指導を実施。3)外来リハ導入後、入学前に養護学校へ訪問し、車椅子の調整や動作能力を伝達したり、入学後は直接担任に動作介助の実演を行った。入学4ヵ月後には、担任が来院され、お互いに現状の報告と今後の役割分担について話し合った。外来リハでは、移動能力とADLへのアプローチを継続し、作業能力の拡大を目指した。頻度は入学までの3ヵ月間は週5日、入学後は週2日。約1年3ヵ月後の現在、寝返りから座位までが自立、立ち上がりと移乗が見守り、移動は片手での側方介助歩行へと改善した。なお養護学校では、勉学に加え、運動、社会活動(作業活動、屋外活動等)を実施している。
【考察】
この症例から、若年者の社会復帰への支援には、回復期以降にも1)回復の可能性があれば十分なリハ量を提供して、機能・活動水準を社会復帰に必要なレベルに高めること。活動水準や心理面の伝達、生活状況や家族の希望も含めた方針の共有等で2)相互連携を図ること。またリハでは主に機能・活動水準を、養護学校では社会参加に繋がるかかわりなど、3)各々の立場で役割分担を確実に行うこと等が有効であったことを学んだ。今後は、セルフケアや作業能力の向上を図り、学校等と連携をとりながら、卒業後の就労を目指していきたい。

著者関連情報
© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top