九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 99
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立位方向転換ステップの動作解析
前方ステップ・側方ステップとの比較
*大田 瑞穂
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抄録

【目的】
脳血管障害片麻痺患者や下肢運動器疾患患者において、移乗場面での立位方向転換動作の問題点として、過剰なステップ速度やステップ数の増加、またそれに伴う動作効率(回旋量)の低下や転倒リスクの増加などが挙げられる。そこで本研究の目的は効率良く方向転換ステップを迎えるために必要と考えられる、動作開始時の力学的課題を解明することとし、前方ステップ・側方ステップ・方向転換ステップの3種類の動作開始時における姿勢制御を比較した。
【方法】
対象は健常男性7名(平均年齢23.1±0.8歳、平均身長167.0±1.2cm、平均体重63.4±4.9kg)とした。被験者には測定前に本研究の内容を説明し承諾を得た。計測は3次元動作解析装置VICON MX13(VICON社製・サンプリング周波数100Hz)と床反力計(AMTI社製)4枚を使用し、マーカーは両側の肩峰、股関節、膝関節、足関節外果、第5中足骨頭、右上後腸骨棘11箇所に貼付した。課題は静止立位(足関節内果間距離10cm)の状態から前方ステップ、側方ステップ、方向転換ステップの3種類(ステップ距離は20cm)を、3秒間の静止立位を行なった後に合図とともに動作を開始した。また、予測的な重心の移動を避ける為に課題の種類は無作為に行った。算出データは各動作で身体重心(以下、COG)・床反力作用点(以下、COP)の初期位置、さらに以下を足底離地以前の区間で算出した。1.COGの支持脚への移動距離(以下、G-stance)、2.COGの前方への移動距離(以下、G-front)、3.COPのステップ側への移動距離(以下、P-step)、4.COPの支持脚への移動距離(以下、P-stance)、5.支持脚方向への重心速度(以下、G-speed)。移動距離は被検者の外果間距離にて正規化し、一元配置分散分析後、多重比較検定(Bonferroni法)により群間比較を行った。
【結果】
G-stance:方向転換ステップは他の2群に対して高値を示し、側方ステップに対して有意に大きかったが(P<0.05)、前方ステップとの有意差はなかった。G-front:方向転換ステップは他の2群と有意差がなかったが、前方ステップが側方ステップに対して有意に大きかった(P<0.05)。P-step・stance:3群間で有意差はみとめられなかった。G-speed:方向転換ステップ・側方ステップは前方ステップに対して有意に遅く(P<0.05)、方向転換ステップと側方ステップでは有意差がみられなかった。
【考察】
3群間での動作開始時におけるCOPの移動には有意差は認められないものの、方向転換ステップでは側方ステップよりも大きく支持脚へCOGが移動し、さらに前方ステップより、遅い速度で支持脚へ移動していることが示唆された。一般的に移動という課題を踏まえるならば、移動方向と逆向きに大きく重心を移動させることは非効率的に考えられるが、支持脚へ大きく・遅く移動することは、回旋運動を行うための軸形成および回旋運動時間を確保するためには重要であると考えられ、この回旋に対する準備段階的課題が方向転換ステップ動作の開始時における大きな特徴であると言える。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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