九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 114
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下肢関節疾患患者における靴下着脱動作環境設定の検討
*杉下 真也能勢 ひろみ赤崎 輝典
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抄録

【目的】
 整形外科下肢関節疾患患者の靴下着脱動作と関節可動域の関連性について検討された報告は多く見られる.しかし,臨床現場において靴下着脱可能な関節可動域を獲得したにも関わらず手が足に届かない事による靴下着脱困難な症例を多く経験する.
 今回,靴下着脱側足底接地有無の環境条件の違いが靴下着脱動作に与える影響について研究を行い若干の知見を得たので報告する.
【対象及び方法】
 健常者15名(男性3名,女性12名,平均年齢29.2±7.6歳)を対象とした.
測定方法に関して,被験者は座面の支持基底面を大腿長の半分の長さとして昇降式寝台に端座位をとり膝関節及び股関節が90°となるように座面の高さを調整し,前額面において両肩峰を結んだ線が水平,矢状面において大転子と肩峰を結んだ線が垂直となる肢位を基本肢位とした.計測は,片足を20cm挙上し足底離地した状態(以下足底離地)と片足を20cm台に乗せて足底接地した状態(以下足底接地)の同一肢位だが環境の異なる条件において肩関節屈曲90°肘関節伸展0°前腕回内90°手関節・手指中間位で前方リーチを行い移動距離を計測した.計測は2回行いその平均値を対応のあるT検定を用いて有意水準は5%未満で検定した.
【結果】
 足底離地は平均30.8±6.0cm,足底接地時は,平均42.6±4.4cmであり,検定の結果,足底離地に比べ足底接地の方が有意に長い結果となった(P<0.05).
【考察】
 検討結果より足底離地に比べ足底接地の方が前方へのリーチは拡大した.これは,体幹の動的安定性が関与していると考える.足底接地する事で前方リーチが向上した要因として,前方の支持基底面が拡大し体幹の前方への動的安定性が向上した事と足底離地では下肢挙上するために働いていた股関節屈曲筋等が足底接地することで骨盤を前傾させることに対して効率良く収縮可能になった事が考えられる.今回の結果から靴下着脱動作時に着脱側足底を台等に接地させる事で足部へのリーチ動作が向上し容易になる事が示唆された.整形外科下肢関節疾患患者であっても日常生活動作障害に対して筋力や関節可動域のみに問題点を求めるのではなく,重力下での作業環境設定を行うことも日常生活自立に繋がる重要なアプローチであることを再認識させられた.

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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