九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 137
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幼児への椅子座位導入に関する一考察
2症例を通して
*江渡 義晃林 亜希子立石 聡子守屋 聡子井崎 理美
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キーワード: 重症心身障害児, 座位, 椅子
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抄録
【はじめに】
 新生児や乳児は日常の世話を受ける際、姿勢保持の為に抱っこされる事が多い。健常児の場合、姿勢・運動の発達に伴い、次第に自力で座位をとるようになり、姿勢保持の為の介助は減少する。しかし障害をもって生まれた場合、抱っこで介助される期間が幼児期以降も必要となる事も多い。その結果、不適切な座位姿勢が原因となり体幹は非対称位となり側弯等を生じる危険がある。今回、日常生活に多くの介助が必要な重度な障害をもつ幼児に対し、家庭用の椅子を改良し導入した。これにより食事や遊び等の日常生活に変化が得られたので、早期の椅子座位導入に関して考察を加え報告する。
【対象】
 一例目はウエスト症候群をもつ、低緊張を呈す男児(以下A)。二例目は脳性まひをもつGMFCS、MACSレベル共にVの女児(以下B)である。共に開始年齢は1歳10ヶ月であった。日常生活活動は二例とも全介助でFIM18点。普段は背臥位で過ごす事が多い。試行前の座位保持時間は、Aは食事時に市販のテーブル付幼児椅子、車での移動時に市販の乳幼児用カーシート(以下カーシート)に座る程度。Bは食事時も抱っこで、カーシート以外で座位になる事は少なかった。
【方法】
 両児の母親に日常生活状況を聴取し、現在自宅に使用可能な椅子を持っているか確認した。Aは食事時に使用している椅子、Bは車に乗せているカーシートと別にもう一台持っていた。これらにバスタオル等で各児に合わせたサポート等を取り付け、座位保持装置として使用できるようにした。
【結果】
 導入後、Aは椅子に座る事を拒否する事もあるが、座位をとる頻度は増え、同居家族と遊ぶ時等、食事以外でも座位をとる時間が増え、家族も積極的に椅子に座らせる様子が伺えた。Bは食事時の椅子座位保持を中心に導入した。椅子上で直接的な姿勢保持に対する介助が必要な場面もあったが、兄弟と遊ぶ時等食事以外でも椅子に座る機会が増えた。この結果、二例とも背臥位で過ごす時間が減少した。
【考察】
 市販の乳幼児用椅子に座れる児も多いが、身体の支えが不充分な場合も多く、臥位で過ごす時間や期間が長期化し、不適切な姿勢での背臥位が継続する事がある。また長期の抱っこにより幼児の依存傾向も高まり、椅子座位保持に拒否を示す事もある。これらの事から、発達年齢に即した時期から椅子座位を検討し、日常生活活動を遂行できる機能的姿勢を導入する必要があると考える。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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