九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 002
会議情報

脳卒中患者が回復期リハビリテーション病棟入院1ヵ月時点で移乗可能かを予測する判別式
-認知FIMとJSS-Hとの比較-
*椎葉 誠也寺師 円香宮城 大介桑田 稔丈中島 雪彦徳永 誠渡邉 進米満 弘之
著者情報
キーワード: 認知FIM, JSS-H, 移乗
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
 先に筆者らは、当院回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)から退院した脳卒中患者を対象に調査を行い、自宅復帰率の高い退院時の杖なしあるいは杖ありでの独歩をめざすには、入院1ヵ月後の車いす移乗自立が重要であることを報告した。佐々木らや三宅らの先行研究によれば、移乗自立には身体機能の影響が大きいものの認知機能も影響すると報告されている。本研究では、回復期リハ病棟入院時の患者情報から入院1ヵ月後の移乗自立を予測すること、そしてその予測において、入院時Functional Independence Measureの認知5項目の合計点(以下、認知FIM)と脳卒中高次脳機能スケール(以下、JSS-H)のどちらが有用かを明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
 2007年9月1日~2008年9月30日に当院の回復期リハ病棟を退院した脳卒中患者のうち、入院時の移乗に監視・介助が必要であった180例中、JSS-Hを評価できた112例を対象とした。方法は、1) 入院時認知FIMと入院時JSS-Hの相関の有無。統計はSpeaman順位相関係数の検定。2) 対象患者を、入院1ヵ月後の移乗が自立した58例(以下、移乗群)と移乗に監視・介助が必要なままの54例(以下、介助群)に分け、年齢、入院時FIMの運動13項目の合計点(以下、運動FIM)、認知FIM、JSS-Hについて、移乗群と介助群の2群間での比較。統計はMann-Whitney U 検定。3) 検討2で有意差を認めた項目を用いて、入院1ヵ月後の移乗自立を予測するための判別分析。その際、認知FIMとJSS-Hのどちらを用いた判別分析がより正確なのかを調べた。検討1~3とも有意水準は5%未満とした。
【結果および考察】
 1)認知FIMとJSS-Hには有意な負の相関があった(相関係数-0.69、p<0.001)。2)運動FIM、認知FIM、JSS-Hには有意差を認めたが、年齢には有意差を認めなかった。3)運動FIMと認知FIMを説明変数とし、入院1ヵ月後の移乗自立を目的変数とした判別分析では、z=0.119*運動FIM+0.011*認知FIM-4.760という線形判別関数が得られ、感度は81.0%(47例/58例)、特異度は72.2%(39例/54例)であった。運動FIMとJSS-Hを説明変数とし、入院1ヵ月後の移乗自立を目的変数とした判別分析では、z=0.129*運動FIM+0.023*JSS-H-5.146という線形判別関数が得られ、感度は84.5%(49例/58例)、特異度は75.9%(41例/54例)であった。したがって、認知FIMよりもJSS-Hを用いた予測式の方が感度、特異度とも上回っていた。先行研究同様本研究でも、移乗自立には認知機能も影響すると考えられる。そのため、移乗自立を目指すのであれば、身体機能だけでなく認知機能に対するリハも積極的に行なうべきであろう。

著者関連情報
© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top