九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 022
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Femur-Horizontal Angleによる仙骨圧縮応力値の変化
*田中 徹志川崎 伸二平野 和也上野 美紀
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キーワード: 褥瘡予防, FH角, SCS値
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抄録

【目的】
 仙骨部位の効率的な除圧方法をコメディカルにフィードバックする為、背臥位時の大腿骨と水平面のなす角度(Femur-Horizontal Angle:以下FH角/単位:°)と仙骨圧縮応力値(Sacral Compression Stress:以下SCS値/単位:mmHg)の関係性を検討した。
【対象及び方法】
 対象は、健常者40名。(男性6名、女性34名)被験者は簡易式マット(WESCO社製)上に背臥位となり仙骨最突出部に、簡易式体圧・ずれ力同時測定器PREDIA(molten社製)を設置。ずれ力(Newton:以下N値/単位:N)を4N以下に設定し、FH角0°、5°、10°、20°時の各SCS値を計測。この際、下腿は水平面に平行となるようにした。各FH角の平均SCS値に差があるかを検証するために、統計処理Excel(statcel2)を用いて一元配置分散分析を行い、有意水準は1%未満とした。
【結果】
 平均SCS値は、各FH角において0°:83.9mmHg、5°:80.4mmHg、10°:96.3mmHg、20°:111.4mmHgという結果であった。一元配置分散分析の結果、P<0.01で4群間の平均SCS値に差がないとした帰無仮説は棄却された。
【考察】
 FH角5°のSCS値が最も小さくなる要因の一つとして仙骨角度の変化が考えられる。MRI(磁気共鳴画像)による背臥位時の大腿骨と水平面のなす角度の解析を行った竹井仁等1)によると、骨盤と仙骨の後傾は連動しているという報告を行っている。さらに、FH角0°、15°、30°、45°、60°での仙骨角度を計測しているが、屈曲初期で仙骨角は前傾し、その後、仙骨角15°~30°では後傾に転じると報告1)している。これらを考慮すると、骨盤の前傾により仙骨角も前傾し、仙骨最突出部より比較的平行面である仙骨下部・尾骨に圧縮応力が移行し仙骨突出部の圧縮応力が分散したのではないかと考えられる。また前傾することで、大殿筋等の軟部組織の接地面積が拡大し、圧縮応力の分散に繋がったことも原因の一つとして考えられる。以上の理由により、FH角5°では仙骨最突出部への圧縮応力が分散しSCS値の減少という結果につながったと思われる。FH角10°、20°ではSCS値は有意に上昇した。これは仙骨が後傾し、臀部等に分散していた圧縮応力が仙骨部へ集中した結果、仙骨最突出部への圧縮応力が増大したと考えられる。
1)引用文献:竹井仁他:理学療法学 Vol.33, No.7 (20061220) pp. 363-369

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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