九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 033
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STOP THE 変形
下腿下垂式ポジショニングが座位姿勢に及ぼす影響について
*西元 美貴原 寛道
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抄録

【はじめに】
 下腿下垂式ポジショニングが、重症心身障害児者の非対称性体幹変形の改善に有効であると報告されている。今回、随意性を有しながら、自発動作によって筋緊張を高め、体幹変形を助長している症例に対して姿勢管理を行なった。その結果、非対称性の改善と筋緊張の軽減による安楽化と随意性の改善に効果を認めたため報告する。
【症例紹介】
 25歳男性。痙性アテトーゼ型(混合型)四肢麻痺。GMFCSレベル5。右凸側彎で第5胸椎から第5腰椎間、cobb角140°。Goldsmith指数60 to Leftねじれ型。移動は座位保持装置付電動車椅子(以下電動車椅子)を使用。一日の大半を電動車椅子の上で過ごし、全ての姿勢において股関節が屈曲している。寝返り・ずり這い・上肢操作などは可能である。余暇はオセロ勝負をして過ごしている。随意性は上肢の方が優位であり、変形した状態から更に動作を行うため、筋緊張は更に高まり変形を助長し、現在もなお変形が進行している。
【アプローチ法】
 支持面を増加するために体幹から臀部・大腿部にわたってクッションを作成。足台を設置し、側彎を矯正し左右対称的な下肢肢位に保てることを基本姿勢とした。週3回、入浴後に30分間このクッションの上に下腿を下垂した背臥位で保持した。
【結果】
 下腿下垂式ポジショニング実施中に不快感は訴えなかった。様々な姿勢にて、下腿下垂式ポジショニング効果について評価を実施した結果、電動車椅子上の姿勢における改善が一番大きかった。
【電動車椅子上の姿勢に関する評価結果】
<ポジショニング施行前>
・臀部にかかる圧力をアビリティーズ社Xセンサーで計測した。体重は偏在はあるものの両臀部で支えられており平均圧は183mmHg。最高圧は右臀部付近で210mmHg。局所的な圧がかかり続け右側へ重心が偏移していた。側彎度は右烏口突起から右上前腸骨棘間距離54cm、左26cm。
・オセロの駒を片付ける時間が3分30秒であった。オセロ中、座位姿勢を自発的に正す回数は8回であった。
<施行後>
・圧が支持基底面内で動くようになり重心が右から正中に近づいた。側彎度は右烏口突起から右上前腸骨棘間距離50cm、左30cmとなり、施行前と比べ、左右対称的な姿勢に近づいた。
・体動は自力にて圧の分散が行え徐圧できるようになった。
・駒を片付ける時間が2分9秒、姿勢を正す回数が5回と減少した。
【考察】
 下腿下垂式ポジショニングで間欠的によい姿勢をとることにより、筋緊張緩和効果が得られた。過度の筋緊張が軽減されたことにより随意的な力が発揮されやすくなった。
  

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