九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 004
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パーキンソン病患者の体幹機能低下の実際
他動自動の関節可動域の比較から
*石田 治久早川 武志百田 昌史生駒 英長田尻 香織高木 桂子毛利 誠水田 聡美本江 篤規橋口 鮎美
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抄録

【はじめに】
 パーキンソン病患者の体幹機能の低下は、周知の事実として広く認識されている。しかし、具体的に体幹のどの動作がどの程度の運動制限をうけるかという報告は少ないように思われる。今回は特に関節可動域(以下ROM)に着目し他動・自動のROMを測定し、一定の傾向を認めたのでここに報告する。
【対象】
 当院を受診されたパーキンソン病患者25名。男性11名、女性14名、年齢68.2±11.2歳、Hoehn&yahr stageI 3名、stageII 7名、stageIII 9名、stageIV 6名
【方法】
 日本リハビリテーション医学会の定めるROM測定方法にて、対象者の体幹の屈曲・伸展、側屈・回旋を、他動・自動のROMを測定し、その差を各運動ごとに比較した。
【結果】
 参考可動域を100%とした場合の体幹各運動の他動、自動ROMを平均化して%で表すと以下の数値となった。
他動:屈曲93.5%、伸展24.1%、側屈30.4%、回旋74.4%
自動:屈曲80.6%、伸展 8.3%、側屈24.3%、回旋50.1%
【考察】
 パーキンソン病患者の体幹は、屈筋が優位に働く為前傾しやすく、いわゆるパーキンソン姿勢を呈してしまう。また斜め徴候と呼ばれる前額面での左右の傾きが生じる事も多い。更に回旋動作も消失しやすく丸太に例えられる程である。これらの体幹機能の低下は、寝返りや歩行、方向転換などの基本動作の大きな阻害因子となる。
 今回の測定結果からも、屈曲は他動ROMで参考値に近く、伸展は著しく制限されており体幹の前傾傾向が確認された。伸展については自動ROMでも、参考値のわずか8.3%と最も小値となった。更に自動は他動と比較すると70%程度と差が生じており、単に関節構成体の問題だけではなく、随意運動が困難なパーキンソン病患者の特徴が出現しやすい動作であることがわかった。そして、回旋に到っては他動ROMが74.4%と比較的維持されているにも関わらず自動ROMは50.1%と有意な差を認め、側屈同様パーキンソン病患者にとって自動運動の困難な動作であることが示唆された。
【まとめ】
 今回の結果から、体幹の伸展は他動・自動ROM共に最も制限を受ける運動であるので、早期から充分な対応が必要と思われた。側屈、回旋に関しては他動ROMと自動ROMに差が生じやすいので他動的なROM練習に加え、自動運動も積極的に行っていくことが重要であると考えられた。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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