九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 040
会議情報

当院における自宅復帰因子について
FIMからの検討
*重吉 太一伊藤 正和興梠 貴美恵毛井 敦松崎 哲治
著者情報
キーワード: 自宅復帰, FIM, 複合動作
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
 当院は大分県別府市に所在する97床の完全回復期リハ病院である。特徴は入院患者の約86%が脳血管障害患者という点である。今回、当院における脳血管障害患者の自宅復帰患者と非自宅復帰患者のFIMの点数等を用いて自宅復帰因子を検討したので報告する。
【対象】
 平成20年度1月1日から平成20年12月31日の期間に当院を退院した全314例の患者の内、運動器障害の患者や再発などで急性期病院へ転院になった患者を除外した、201例の脳血管障害患者を対象とした。内訳は自宅復帰群が136例、非自宅復帰群が65例であった。
【方法】
 対象の転帰を自宅復帰群と非自宅復帰群の2群とし、1:年齢2:当院入院までの期間3:当院の入院期間4:同居者の有無5:入院時FIM(全ての項目)6:退院時FIM(全ての項目)7:入院時FIMと退院時FIMの変化の各項目を調査した。そして、独立変数を転帰とし、従属変数をその他の項目とした、重回帰分析を行った。
【結果】
 自宅復帰に有意な相関があったものは入院時の更衣動作やトイレ動作などの項目と、退院時の浴槽・シャワー動作や移動、階段、更衣、移乗、問題解決といった項目であった。
【考察】
 結果から更衣動作やトイレ動作の早期獲得が自宅復帰に繋がっていくと考えられる。これらは病棟で頻繁で行われるADL動作であり、当院でもセラピストが積極的に介入している。退院時は浴槽・シャワー動作や移動、階段、更衣、移乗、問題解決の項目が挙がった。これらは単独の系統動作であるが組み合わせると入浴動作という複合動作に近づくと考えられる。入浴動作は更衣や浴室内の移動、浴槽への出入り時の段差昇降、清拭動作が含まれる。複合動作は様々な動作が組み合わさっており、自立させることは非常に困難である。よって、複合動作を自立させるために単に機能訓練を行うだけでは不可能である。また、脳血管障害患者は何らかの高次脳機能障害を合併していることが多いので、実際の動作訓練だけでは無く、行為の細分化を図り、分かりやすく学習させていく必要もある。退院前には自宅復帰に向け、家屋改修や入浴動作の家族への指導も必要になってくる。理学療法士は基本動作や歩行動作に目を向けがちであるが自宅復帰に向けては単一な動作では無く、今後は複合動作にも目を向けていく必要があると感じた。

著者関連情報
© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top