主催: 社団法人日本理学療法士協会九州ブロック会・社団法人日本作業療法士協会九州各県士会
【はじめに】
Step動作は歩行の前段階として、動作時の対応やその際の下肢・体幹の姿勢を評価・再現する目的で行える有効な動作である。この動作を課題とした先行研究では、開始肢位での両下肢の荷重割合は任意で行われており、荷重の偏りが動作に与える影響を検討した研究は少ない。
今回、我々はStep動作の部分的要素であるStep位での前方重心移動動作にて、開始肢位での両下肢の荷重割合の違いが、身体に与える影響を検討したので報告する。
【対象・方法】
対象は、健常男性8名16側(平均年齢は23.9±2.6歳)。
方法の概要は、Step位で両膝関節伸展位、両下肢を接地させた状態での前方重心移動動作を測定課題とし、開始肢位での前方下肢にかかる荷重量を体重の60%(以下、前方荷重位)と体重の40%(以下、後方荷重位)の2条件に設定し比較した。
撮影は前方下肢側方より、動作開始時・終了時に行い、得られた画像より、床面を基準とした空間座標軸に対する体幹(肩峰‐ASIS)の傾きを体幹傾斜角、骨盤(ASIS‐PSIS)の傾きを骨盤傾斜角、大腿軸(大転子‐膝関節裂隙)の傾きを大腿傾斜角とした。また前述のランドマークを元に骨盤に対する体幹の相対角度を体幹屈曲角、骨盤に対する大腿軸の相対角度を股関節屈曲角とし計測した。
統計学的処理は、開始肢位と終了肢位の各傾斜角度とその角度変化量(終了-開始)を検定項目とし、2条件間の比較を、対応のあるt検定・Wilcoxon符号付順位和検定を用いて検討し、危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
1)開始・終了肢位ともに床面を基準とした全ての傾斜角度の前方傾斜が前方荷重位で大きかった(p<0.05)。
2)骨盤を基準とする相対角度において、開始肢位では体幹・股関節屈曲角が前方荷重位で大きかったが、終了肢位では統計学的有意差を認めなかった(p<0.05)。
3)角度変化量において、前方荷重位は床面を基準とした全ての傾斜角度と、股関節屈曲角 の伸展方向への変化量が少なかった(p<0.05)。
【考察】
結果1)より、前方荷重位で床面を基準とした全ての傾斜角度の前方傾斜が大きいことから、前方下肢への荷重の偏りは床面に対して身体を前方へ傾ける要因となることが考えられた。
結果2)より、開始肢位では、身体の傾きを体幹・股関節の屈曲で対応しているのに対して、終了肢位では体幹・股関節の対応に個人差が推測された。
結果3)より、前方荷重位では動作の運動範囲やこれを制御する股関節伸展活動を阻害することが考えられた。
以上のことより、動作開始時の前方下肢に荷重の偏りがある場合は、非効率的な代償運動・身体制御などが生じやすいことが推測された。