九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 19
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変形性膝関節症患者における膝関節伸展制限の有無はTKA術後の機能に影響するか
*宮里 幸河野 一郎時枝 美貴藤吉 大輔岡 瑠美北里 直子高杉 紳一郎岩本 幸英
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キーワード: TKA, 伸展制限, 運動機能
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抄録

【目的】
人工膝関節全置換術(TKA)において術前の膝関節屈曲可動域制限が術後の獲得可動域に影響することについての報告は多く存在するが、伸展可動域制限の影響についての報告は少ない。本研究の目的は術前の伸展制限の有無と術前・退院時の膝関節可動域(ROM)、歩行能力、疼痛、筋力との関係を明らかにすることである。
【方法】
対象は2007年4月~2009年11月までの間に当院にてTKAを施行した119例141膝である。本研究の対象には十分な説明を行い、同意を得た。対象を術前の膝関節伸展可動域から0~-5°を伸展制限なし群(男性4名、女性76名、平均年齢73.9歳、平均術後在院日数27.0日)、-10~-20°を伸展制限があり群(男性5名、女性43名、平均年齢73.3歳、平均術後在院日数26.4日)に分類した。それぞれの群の術前・退院時の膝関節伸展、屈曲ROMと筋力、疼痛の評価として安静時のVisual analog scale(VAS)、歩行能力の評価として10m最大努力歩行時間、歩数、Timed up & go test(TUG)を比較検討した。筋力測定はCOMBIT(ミナト医科社製)で、座位での膝関節屈曲60度で等尺性運動を行った。統計には、対応のないt検定を用い、有意水準を5%未満とした。なお、本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
伸展制限あり群の術前伸展ROMは-13.5°、屈曲ROMは121.0.°で、なし群の-2.1°、132.0°よりも有意に制限されていた(p<0.01)。退院時においても、あり群-4.3°、120.3°、なし群-1.4°、126.1°で制限が有意に大きかった(p<0.01)。10m最大努力歩行時間、歩数、TUGは、術前はあり群:12.0秒、21.3歩、17.1秒、なし群:10.1秒、19.4歩、14.8秒になり有意な差があったが(p<0.05)退院時には差はなかった。VASは、術前はあり群21.9mm、なし群14.0mmで、あり群が有意に大きかったが(p<0.05)退院時には差はなかった。術前の屈曲筋力は、なし群が有意に強かったが(p<0.05)、術後の屈曲筋力、術前・退院時の伸展筋力に差はなかった。
【考察】
伸展制限あり群はなし群に比較して、術前に屈曲制限や疼痛が大きく、歩行能力は有意に低かった。TKA施行により疼痛や歩行能力では両群の差はなくなったが、屈曲・伸展のROM制限の差は残存した。このことより術前の伸展制限は、退院時のROMに影響することが示唆され、術前からの伸展可動域改善に対するアプローチは重要であると考えられた。また、歩行能力はTKA施行により、疼痛軽減、伸展ROMが拡大したことによる歩幅の増大などによって差が無くなったものと考えられた。退院時の屈曲ROMが術前と同程度にとどまっていたことより、退院時にROM訓練のホームプログラムの指導が必要であり、今後は退院後の長期的な経過について分析することが課題である。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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